明星大学心理学年報 第30号

明星大学心理学年報 第30号 page 11/58

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明星大学心理学年報2012,No.30,7―16原著大学生の友人関係におけるソーシャルサポートの授受と自我同一性との関連?磯谷俊仁?岡林秀樹??本研究の目的は,大学生において,友人とのソーシャルサポートの授受が,自我同....

明星大学心理学年報2012,No.30,7―16原著大学生の友人関係におけるソーシャルサポートの授受と自我同一性との関連?磯谷俊仁?岡林秀樹??本研究の目的は,大学生において,友人とのソーシャルサポートの授受が,自我同一性に及ぼす影響とその性差を検討することである。大学生356名に無記名方式による質問紙調査を行い,313名から回答を得た。分析の結果,サポートの授受が自我同一性に及ぼす影響には性差があり,男子学生は友人にサポートを提供することが自我同一性を確立させる上で重要であるが,女子学生は提供サポート量と受領サポート量のバランスがとれ,友人からサポートをもらえる関係が築かれているということが自我同一性を確立させる上で重要であることが示唆された。将来の研究では,性別による自我同一性確立過程の機序の違いについて,更に焦点をあてることが望まれる。キーワード:ソーシャルサポート,自我同一性,青年期,友人関係児童期から青年期にかけての人間関係の変化について,宮下(1995)は児童期までの生活の中心はあくまで“家庭”であるが,青年期においては家庭を離れ,人間関係の中心は友人との関係に移っていくとし,青年期の発達における友人関係の重要性を指摘している。Erikson(1959)は青年期における発達課題として,自我同一性の確立を挙げている。自我同一性とは,“斉一性”,“連続性”,“帰属性”を基盤に確立される自己意識の総体のことである。“斉一性”とは自分が見た自己と他者から見た自己が同一の存在であるという認識,“連続性”とは以前の自分と現在の自分が同一の存在であるという認識,“帰属性”とは自分が何らかの社会的集団に所属しており,その集団との一体感を持つとともに,その集団成員に自分の存在が承認されているという感覚のことである。青年期は職業の決定等,将来に多大な影響を及ぼす選択を迫られる時期であるが,自我同一性の確立が青年期で達成されない場合,自我同一性拡散となり,青年期に行われなければならない重要な選択が上手くできない可能性が高くなる。また,青年期に自我同一性が確立されない場Correspondence concerning this article should be sent to:Toshihito Isoya, Graduate School of Humanities, MeiseiUniversity,Hodokubo,Hino 191-8506,Japan (e-mail:09mp005@stu.meisei-u.ac.jp)?明星大学人文学研究科??明星大学人文学部心理学科?本論文は,第一著者が平成22年度明星大学人文学研究科心理学専攻に提出した修士論文をもとに,仮説の整理および新たな考察の追加を行ったものである。本論文の内容の一部については,日本心理学会第75回大会において発表した。合,青年期の次段階にあたる初期成人期の発達課題である“親密性”の確立が難しくなる。そのため,青年期に自我同一性を確立することが後の発達において重要になるとEriksonは考えていた。それでは,青年期において重要性が指摘されている友人関係と自我同一性の確立には関連があるのだろうか。友人との関係をより具体的に把握するために,援助のやりとり,すなわちソーシャルサポートの授受という視点でとらえることが望ましいように思われる。ソーシャルサポートとは,Caplan(1974)によると,家族や友人,隣人等,ある個人を取り巻く様々な人々からの有形・無形の援助を指すものとされる。他者からソーシャルサポートを受けることによるストレスの緩和効果や,身体的あるいは心理的な健康への影響についての多くの研究が行われてきたが,近年では個人はサポートの受け手であると同時にサポートの送り手でもあるという観点からの研究を行う必要性が指摘されており,ソーシャルサポートの授受に焦点をあてた研究が,徐々に行われてきている。友人とのソーシャルサポートのやり取りと自我同一性の確立との関係について実施された3つの先行研究を概観する(宮下・渡辺,1992;宮下,1998;福岡・友野・橋本,2000)。宮下・渡辺(1992)は大学生の男子学生89名,女子学生119名を対象に自我同一性と中学時代・高校時代・大学時代の友人・両親・教師それぞれとの関係を男女別に調査した。その結果,男子学生においては高校時代には父親から,大学時代には教師から助言や理解といったサポートを得られる関係が築かれていることが,大学生の時の自我同一性の確立にとって重要