明星大学心理学年報 第30号

明星大学心理学年報 第30号 page 13/58

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磯谷・岡林:大学生の友人関係におけるソーシャルサポートの授受と自我同一性との関連9た,サポートの授受がともに多い場合には,その人を取り巻くサポートの交換が可能な友人ネットワークが広いことが考えられる。....

磯谷・岡林:大学生の友人関係におけるソーシャルサポートの授受と自我同一性との関連9た,サポートの授受がともに多い場合には,その人を取り巻くサポートの交換が可能な友人ネットワークが広いことが考えられる。また,森本(2006)の研究において,ソーシャルサポートの提供と受領がともに多い場合に精神的健康が最も維持されていることから,サポートの授受がともに多い場合には自我同一性得点が最も高くなるであろう。衡平理論から考えると,サポートの提供量と受領量との間に差がある場合には,負債感や負担感を抱くため自我同一性得点はやや低いものとなるだろう。サポートの授受がともに少ない場合には自我同一性得点が最も低くなるであろう。以上の理由から,仮説1を設定した。次に仮説2を立てた理由であるが,宮下・渡辺(1992)の研究から,男子学生は親や教師との関係が自我同一性の確立に大きな影響を及ぼしている反面,友人との関係はそれほど自我同一性の確立に影響を及ぼしていない。よって,本研究でも男子学生の場合,友人とのソーシャルサポートの授受は自我同一性の確立にあまり影響を及ぼさないと考えられる。一方,福岡他(2000),宮下・渡辺(1992),および,宮下(1998)の研究から,女子学生においては友人とのサポート授受の量と自我同一性の確立に正の関係があると考えられる。また,ソーシャルサポートを多く受領している人は情緒的依存欲求も高くなると考えられるが,竹澤・小玉(2004)の研究によると,男子学生は情緒的依存欲求と自己信頼感に関係がなかったのに対し,女子学生は情緒的依存欲求が高いほど他者信頼感だけでなく自己信頼感も高くなっていた。女子学生において,友人との信頼できる交流が自我同一性の確立を促進させると仮定するならば,友人とのサポート授受が多いほど自我同一性が確立されると考えられる。以上の理由から,仮説2を設定した。方法調査時期および調査方法2010年5月13日から6月17日の間に無記名方式による質問紙調査を行った。調査紙は大学の講義時間に配布をし,その場で回収した。その場での回収が難しい場合,後日心理学研究室に備え付けた回収箱に質問紙を入れてもらった。調査対象大学生356名を対象に質問紙調査を行い,そのうち313名から回答を得た。調査回答者の基本属性は,性別に関しては男子学生128名,女子学生183名,学年に関しては1年生109名(男45名,女64名),2年生90名(男35名,女54名,性別不明1名),3年生82名(男38名,女43名,性別不明1名),4年生32名(男10名,女22名)であった。年齢の分布は18~23歳であった。質問紙の構成受領サポート(福岡・橋本,1997)6項目,提供サポート6項目,自我同一性尺度(下山, 1992)10項目を用いた。受領サポート尺度(福岡・橋本,1997)の質問項目は“アドバイス・指導”,“なぐさめ・励まし”からなる情緒的サポートを測定するための6項目と,“物質的・金銭的援助”,“具体的行動による援助”からなる手段的サポートを測定するための6項目の合わせて12の質問項目で構成されていたが,本研究では青年期の友人関係において,より重要であると考えられる情緒的サポートを測定する6項目を使用した。受領サポートを測定するために,“大学に入学してから,普段の生活の中で友人は以下のことをどれぐらいしてくれますか。最もあてはまる数字に○をつけてお答えください。”と尋ね,“ぜんぜんしてくれない”,“あまりしてくれない”,“たまにしてくれる”,“しばしばしてくれる”,“しょっちゅうしてくれる”,の選択肢の中から一つを選択して回答してもらった。福岡・橋本(1997)の研究では,これら6項目のクロンバックのα係数は.89であった。提供サポートの測定には受領サポートの測定に用いた質問項目の語尾を“…してあげる”といったように文章を改変して使用した。提供サポートを測定するために,“大学に入学してから,普段の生活の中で友人に以下のことをどれぐらいしてあげますか。最もあてはまる数字に○をつけてお答えください。”と尋ね,“ぜんぜんしてあげない”,“あまりしてあげない”,“たまにしてあげる”,“しばしばしてあげる”,“しょっちゅうしてあげる”,の選択肢の中から一つを選択して回答してもらった。提供サポート・受領サポート得点ともに1点から5点まで順に配点した。AppendixⅠに受領サポート尺度の質問項目を,AppendixⅡに提供サポート尺度の質問項目を,それぞれの回答分布とともに示した。自我同一性尺度(下山, 1992)の質問項目は自我同一性確立尺度10項目と自我同一性基礎尺度10項目の合わせて20項目から構成されているが,本研究では自我同一性の確立に焦点をあてているため,自我同一性確立尺度の10項目のみを用いた。自我同一性確立尺度は,社会的状況における自我同一性の確立に関連する項目で構成されており,主として主体性,個性,社会性といった青年期後期の発達課題に関わる側面を測