明星大学心理学年報 第30号

明星大学心理学年報 第30号 page 16/58

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12明星大学心理学年報2012年第30号(p<.05),提供サポート中群よりも提供サポート高群のほうが自我同一性確立得点が高かった(p<.001)。また,提供サポート高群において,受領サポート中群のほうが低群よりも自我....

12明星大学心理学年報2012年第30号(p<.05),提供サポート中群よりも提供サポート高群のほうが自我同一性確立得点が高かった(p<.001)。また,提供サポート高群において,受領サポート中群のほうが低群よりも自我同一性確立得点が高かった(p<.05)(Figure 2)。考察大学生全体を対象にサポート授受の自我同一性への影響を検討した結果,提供サポートのみ自我同一性に影響がみられ,受領サポートには有意な効果はみられなかった。この結果により,“サポートの授受がともに多いほど,自我同一性が確立される”という仮説1は棄却された。提供サポートのみが自我同一性の確立に影響した理由としては,サポートを友人に提供する学生の自尊心や有能感が高まり,その高い自尊心や有能感が自我同一性の確立を容易にさせたためということが考えられる。そのことはBrown et al.(2003)の研究と一致するものである。一方,サポートを友人から受ける場合は,自尊心や有能感は高まらないため,自我同一性の確立の促進には繋がらなかったと考えられる。サポートの授受の自我同一性への影響の性差を検討した結果,サポートの提供量とサポートの受領量と性別の間に交互作用がみられた。女性においてサポート授受の量と自我同一性の確立に正の関係があるという仮説のパターン通りではなかったが,この結果から,“サポートの授受が自我同一性に及ぼす影響には性差がある”という仮説2は支持された。男子学生においてサポートの提供量の主効果が有意であった理由としては,仮説1に対応する考察で示したのと同じ理由が考えられる。女子学生の自我同一性の確立とサポートの授受との関係で特徴的だったのは,受領サポートが少なく,提供サポートが多い場合に,女子学生の自我同一性確立得点が特に低くなっていたことである。このことに関しては,衡平理論(周・深田,1996)で説明ができるだろう。つまり,受領サポートが少なく,提供サポートが多いために,負担感が高まり,それが女子学生の自我同一性の確立を阻害したのではないかと考えられる。また,女子学生においては受領サポートが多い場合には,提供サポートが多い場合だけではなく,提供サポートが少ない場合も,自我同一性が確立されていた。このことから,女子学生の自我同一性の確立には,友人からサポートをもらえる関係が築かれていることが重要な意味を持っている可能性が考えられる。友人からサポートをもらえる関係は,友人から安心感を得られるような関係であると考えられる。上記の結果は,女子学生は“精神的な安らぎ・相互信頼”が得られる友人関係を持つことが,自我同一性の確立に重要な意味を持つという宮下(1998)の研究で得られた知見とも一致するものである。また,この結果は,女子学生は情緒的依存欲求が高いほど他者信頼感だけでなく自己信頼感も高いという竹澤・小玉(2004)の研究結果に沿ったものでもあり,友人との信頼できる交流が自我同一性の確立を促進させるという仮定通りであると考えられる。友人からサポートを受領することにより,その友人への信頼感が高まり,その信頼感を基盤とした友人関係で培われた自己信頼感が,自我同一性の確立という青年期における適応的な発達に作用したことが考えられる。結論全体的にはサポートの提供量の多さが自我同一性の確立に影響している可能性が示唆された。本研究で“サポートの授受が自我同一性に及ぼす影響には性差がある”という仮説2が支持されたことで,男子学生はサポートを提供することが自我同一性の確立に影響を与えている可能性が示唆された。この理由としては,サポートを友人に提供する男子学生は,自尊心や有能感が高まり,その高い自尊心や有能感が自我同一性の確立を容易にさせたということが考えられる。一方,サポートを友人から受ける場合は,自尊心や有能感は高まらないため,自我同一性の確立の促進には繋がらなかったと考えられる。女子学生は受領サポートが少なく,提供サポートが多い場合に友人にサポートを提供しても,見返りとしてのサポートがもらえないという負担感が高まり,この負担感が自我同一性の確立を阻害したことが示唆された。また,女子学生において受領サポートが多い場合には,提供サポートが多い場合だけではなく,提供サポートが少ない場合も,自我同一性が確立されていることから,女子学生の自我同一性の確立には,友人からサポートをもらえる関係が築かれていることが重要な意味を持っている可能性が示唆された。つまり女子学生に関しては,友人からサポートをもらえる関係が築かれており,そのような友人との信頼できる交流を基盤として自己への信頼が高まり,周囲から疎外されていないことが自我同一性を確立させる上で重要であることが示唆された。上記のように,本研究ではサポートの授受が自我同