明星大学心理学年報 第30号

明星大学心理学年報 第30号 page 32/58

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28明星大学心理学年報2012年第30号Figure 3 PEATの操作画面(Levinson,1997).リハとしては,Stablum,Umilta?,Mazzoldi,Pastore,& Magon(2007)と今村・佐藤・安間(2002)の2つの直接刺激法による介入が挙げられる....

28明星大学心理学年報2012年第30号Figure 3 PEATの操作画面(Levinson,1997).リハとしては,Stablum,Umilta?,Mazzoldi,Pastore,& Magon(2007)と今村・佐藤・安間(2002)の2つの直接刺激法による介入が挙げられる。このうち,Stablum,etal.(2007)は,脳損傷者の内発的な課題の転換(endogenoustask shift)を促進させるために,10名の重度頭部外傷者と8名の軽度頭部外傷者に対して,文字に対する判断と数字に対する判断の切り替えが規則的に要求されるコンピュータ化された訓練課題を用いた反復訓練を1週間に渡って実施した。その結果,重度頭部外傷群において,課題の切り替えが求められる同様の評価課題の遂行が訓練後に有意に改善し,こうした訓練効果は4ヵ月後のフォローアップ期でも維持された。Stablum,et al.(2007)は,プラセボ治療をおこなった重度頭部外傷者では,介入後の再評価の際に遂行の改善が認められないことを明らかにしたうえで,反復訓練を受けた重度頭部外傷群でみられた訓練後の評価課題の改善は,単純に評価課題を2回実施したことによるものではないと述べている。さらに,構えの転換について反復訓練をおこなった頭部外傷群では,Pased Auditory Serial Addition Task(PASAT)やBADS,二重課題といった各指標において,訓練効果の般化が観察された。今村他(2002)は,前交通動脈瘤破裂後の前頭葉機能障害と関連して,流暢性課題に遂行障害を示した症例を対象に流暢性訓練を実施した。語想起課題と図形想起課題を訓練課題として,週に1回の頻度で各課題につきそれぞれ20週程度の反復訓練を実施したところ,いずれの課題においても,訓練期には産出語数または産出図形数が徐々に増加する傾向が認められた。しかし,訓練期やその後の観察期で患者が産出した単語や図形には既出のものが多く含まれており,患者の反応の質的側面には訓練による変化があまり生じなかった。2-2.行動的―情動的自己調整機能行動の自己制御や情動処理とかかわる行動的―情動的自己調整機能の障害は,攻撃行動や保続行動,不穏などの行動障害や情動障害をしばしば引き起こす。この領域の認知リハは,患者のリハビリテーションや社会生活を阻害するこれらの行動及び情動障害の修正や制御をねらいとして実施される。行動修正Aldermanらは,脳損傷者の行動障害を修正するために,学習理論に基づくさまざまな行動療法的手法を駆使した一連の事例研究をおこなった。まず,Alderman(1991)では,頻繁に大きな叫び声をあげるという症状によってリハビリ活動のほとんどが妨げられていた24歳の頭部外傷者に,飽和法と負の訓練を利用した治療が試みられている。Aldermanは,1日につき2回実施される30分の個人セッションで,次の4段階からなる訓練を導入した。1)患者自身の叫び声を繰り返し録音したテープをセッションの間中ヘッドホンで聴かせる。2)叫び声のテープを聴きながら,安定が良く,かつ,患者が叫んだときの異常な声のトーンが最小となるような姿勢で車椅子に座る練習をおこなう。3)1分間の休憩をはさんで2,3分叫ぶ訓練を繰り返しおこなう。4)ワードロープに服を掛けたり,靴を履き替えたりといった日常的な課題を叫びながらおこなう。これらの4つの介入を段階的に実施した結果,患者の叫びの頻度と持続時間はベース