明星大学心理学年報 第30号

明星大学心理学年報 第30号 page 39/58

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柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション35最後に,前頭葉機能障害の在宅での認知リハの話題について言及したい。一般に,認知リハは病院や施設内で治療者の指導のもと実施される。しかし,自宅退院した患者の....

柴崎:前頭葉機能障害の認知リハビリテーション35最後に,前頭葉機能障害の在宅での認知リハの話題について言及したい。一般に,認知リハは病院や施設内で治療者の指導のもと実施される。しかし,自宅退院した患者のなかには,居住地が病院や施設から離れていたり,患者自身あるいは介護者の身体的問題などで定期的な通院・通所が難しく,提供されているサービスを充分に受けられない者が少なからず存在する。こうした場合に,患者が在宅のまま受けることが可能な認知リハサービスの提供があれば非常に便利である。近年の情報機器やインターネット環境の普及は,こうした患者のニーズを後押しするもので,本邦においても,福山大学の橋本らの研究グループによってインターネットを介した在宅での認知リハシステム「いつでもどこでも認知リハ」の開発が進められている(研究成果の一部は既にインターネット上で公開されているので参考とされたい)。ただ,ここで留意すべきなのが治療者不在で実施される認知リハの訓練効果にまつわる問題である。認知リハの治療効果について2000年から継続的にメタ分析をおこなっているCiceroneらによると(Cicerone,etal.2000,2005,2011),注意障害や言語障害を対象とした場合には,治療者からの介入がない状態で実施されるコンピュータを用いた機能回復訓練は推奨されない。一方,問題解決障害に関しては,治療者が患者のそばについて直接指導する従来型の認知リハや,遠隔地に居る治療者の制御のもとでコンピュータによる訓練が進められる介入の場合と同様に,患者が単独でコンピュータに向かって自身のペースで訓練を進めていく訓練プログラムを実施したときにも,患者の問題解決技能が訓練後に改善したことを示す研究がある(Soong,Tam,Man,& Hui-Chan,2005,Man,Soong,Tam,&Hui-Chan,2006)。前頭葉機能障害に対する在宅での認知リハの訓練効果について直接的に扱った研究は,前章で述べたPEATやNeuroPageなどの外的補助装置を使用した認知リハを除いて,現在のところあまりおこなわれていないが,Soongらの研究結果は,前頭葉機能障害の在宅認知リハの可能性や有効性についての示唆を与えるものであり,この領域におけるより一層の資料の蓄積が待たれる。引用文献Alderman,N. (1991). Thetreatment ofavoidancebehaviour following severe brain injury by satiationthrough negative practice. Brain Injury, 5,77-86.Alderman,N. (2003). Rehabilitation ofbehaviourdisorders. In B. A. Wilson (Ed). NeuropsychologicalRehabilitation : Theory and Practice.Lisse :Swets & Zeitlinger.pp.171-196.Alderman, N., & Burgess, P. (1994). A comparisonof treatment methods for behaviour disorderfollowing herpes simplex encephalitis. NeuropsychologicalRehabilitation,4,31-48.Alderman, N., Fry, R. K., & Youngson, H. A.(1995). Improvement of self-monitoring skills,reduction of behavioral disturbance and thedysexecutive syndrome :Comparison of responsecost and a new programme of self-monitoringtraining. Neuropsychological Rehabilitation, 5,193-221.Alderman,N.,& Knight,C. (1997). TheeffectivenessofDRL in themanagement and treatment ofseverebehaviour disorders following brain injury.Brain Injury,11,79-101.Alderman, N. & Ward, A. (1991). Behaviouraltreatment of the dysexecutive syndrome :Reductionof repetitive speech using response cost andcognitive overlearning. NeuropsychologicalRehabilitation,1,65-80.穴水幸子・加藤元一郎・斎藤文恵・鹿島晴雄(2005).右前頭葉背外側損傷に対する遂行機能リハビリテーション認知リハビリテーション2005,51-58.Baddeley, A. D., & Wilson, B. (1986). Amnesia,autobiographical memory and confabulation. InD. C. Rubin (Ed.), Autobiographical memory.Cambridge : Cambridge University Press. pp.225-252.Bornhofen,C.,& Mcdonald,S. (2008a). Treatingdeficits in emotion perception following traumaticbrain injury. Neuropsycholgical Rehabilitation,18,22-44.Bornhofen, C., & Mcdonald, S. (2008b). Comparingstrategies for treating emotion perceptiondeficits in traumatic brain injury. The Journalof Head Trauma Rehabilitation,23,103-115.Burke,W.H.,Zencius,A.H.,Wesolowski,M.D.,&Doubleday, F. (1991). Improving executivefunctiondisordersinbrain-injuredclients. BrainInjury,5, 241-252.Chen,A.J-W.,Novakovic-Agopian,T.,Nycum,T.J., Song, S., Turner, G. R., Hills, N. K., . . .