明星大学心理学年報 第30号

明星大学心理学年報 第30号 page 5/58

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明星大学心理学年報2012,No.30,1―2塚田紘一先生の退任によせて小美野喬塚田紘一先生は,1966年4月より明星大学人文学部心理・教育学科助手として就任以来,専任講師,助教授,教授と昇格され,以来,今日に至るま....

明星大学心理学年報2012,No.30,1―2塚田紘一先生の退任によせて小美野喬塚田紘一先生は,1966年4月より明星大学人文学部心理・教育学科助手として就任以来,専任講師,助教授,教授と昇格され,以来,今日に至るまで40有余年にわたり,明星大学において研究と教育に従事してこられ,2011年3月をもって定年退職されました。この間における先生のご活動は,この一文をもっては記しがたいほど様々な方面において,多大な影響を及ぼしてこられました。本文では,先生の多方面におけるご活躍を記すことができればと思い,私の学部時代の恩師としての始まりから教員の大先輩として今日に至るまで,公私ともに30数年におよびご指導いただいてきたご厚情に甘え,以下にそのご功績の一端を紹介させて頂きます。学内のご活躍について,先生は,心理学専修主任,通信教育部部長・課程長代行,人文学部長,そして図書館長を歴任されました。この間,心理学専修の教育・研究に相応しい環境づくりをめざし,今日の心理学科における開放的でありつつも厳粛な雰囲気を持つ研究室へとつながる礎を築かれました。また,通信教育部部長の時期においては,教育・研究者であるとともに経営責任者のお立場から,学生の多様化に合致したカリキュラムの改定,大学院新設に向けての準備,大学出版部における出版物刊行の活性化,あるいは職員への処遇改善を成し遂げてこられました。さらに先生は,人文学部長の在任中,少子化による大学入学者の減少化と新設大学の急増期を迎え,これらへの対応策として大学改革や学部改編に努め,今日に至る道筋を明示されました。図書館長の職にあっては,旧来の図書館観を一掃してしまったかのように,学生が長時間にわたり利用しやすく,しかも多様な情報収集を可能とする開放性を指向した新図書館に相応しい利用法を構築されました。さらに,先生は,学外的にも重責を果され,多摩市教育委員会において発達心理学と教育心理学といったご専門の立場から当時としては斬新な地域住民参加型の会合を主導され,あるいは,大学運営上の豊富な知識と経験を生かし,本大学近郊にある「大学セミナーハウス」の維持・管理にかかわる企画委員として参画され,学内ばかりでなく地域社会に対しても貴重な貢献をしてこられました。教育者としての業績について,先生は,理性と情熱の二つをもって臨んでこられました。教育者としての先生は,これまでに400名を超える門下生を輩出され,厳格な指導は当然のことながら,これと併存する家庭的とでもいうべき独特の雰囲気のもと,卒業生ばかりでなく現役学生の間から「塚田ファミリー」として親しまれ,慕われてきました。また,先生は,「いわき明星大学」の開学から完成年度までの4年間,兼任講師として毎週1泊2日で出講され,第1回生の入学から卒業までをつぶさに見てこられました。従って,今回の東日本大震災について,被災されたかつての教え子達への先生の思いは,如何ばかりであったか想像に難くありません。先生の研究者としてのご専門は,教育学に根ざした心理学であろうかと思います。その一端は,先生が「国語」の高等学校教諭免許取得者であることと,厳格なドイツ系教育学研究途上で育まれたドイツ語の堪能な使い手であることからうかがい知ることができます。先生は,研究者として出発された当初から,ドイツ系の教育学と世界を代表する心理学者であるJ. Piajetの発達研究を主とする心理学を融合させた教育心理学を専門領域と定め,この研究姿勢を首尾一貫してとり続けてこられました。この研究姿勢は,本学人文学部心理・教育学科発足当初の基本理念と完全に一致するものであり,先生の本学への就任は,したがって,必然的であったように思われます。先生は心理学と他分野との学際的研究にも関心を持たれ,心理学者のお立場にある先生と社会学者(堤史朗),健康スポーツ科学者(綿貫敏雄)および私を含めた4名によるコドモの「遊び」に関する2年近く継続した学内共同研究の作業は,先生の厳格な学問的姿勢を学ぶことができた歓びとともに,その誠実なお人柄を身近に知り得た素晴らしい体験となりました。先生は,一方で厳密な中にも寛容を取り込みながらの白熱した議論を好まれるだけでなく,他方では純情極まりなき家族思いであり,また,多様な趣味をお持ちです。先生のご出身地は,奥様とともにお二方のご両親も富山と伺っていました。先生は自動車の運転が巧みで,多忙の合間に時間を取ってはご両親のために,成長してゆく二人のお子さんを同乗して,帰省してお