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心理学年報31号

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明星大学心理学年報2013,No.31,7―16資料風景構成法の客観的解釈に関する検討――ロールシャッハ包括システムおよびGHQとの関連から――加納信吾?石井雄吉??風景構成法の読み解きは,臨床家の個人的な経験に依存する部分が大きい。さらに,本法は投映法であるため,臨床における関係性がその作品や解釈に大きく影響を及ぼしているので,その読み解きはなおさら複雑となっている。しかし,そうであるからこそ,本法の解釈にあたっては,恣意的な解釈を避けるためにも,その指針となるような枠組みが必要となってくる。そこで,本研究では,風景構成法の数量化により標準化された心理検査との関連を検討可能にしたLMTCLを用いて,同法の客観的な解釈について,ロールシャッハ法(包括システム)およびGHQとの相関関係から検討した。Spearmanの順位相関係数を求めた結果,LMTCL項目と包括システム変数・GHQ下位尺度とに多くの強い関連が認められた。そこで,typeⅠerrorを回避するために,r=±.4以上で,かつ無相関検定の有意確率1%水準以上の結果を対象に限定して若干の考察を加えた。キーワード:風景構成法,数量化,ロールシャッハ,GHQ風景構成法とその読み解きについて風景構成法(The Landscape Montage Technique,以下LMT)は,医療域だけでなく教育相談やスクールカウンセリングといった教育現場においても,その有用性が数多く報告されている(e.g.,原, 2004,鷲岳, 2006,神薗,2011)。しかし,本法を心理検査法としてみた場合,投影法の中の描画法に属しているため,被検者の反応の自由度はきわめて高く,そのため読み解く側の客観性はきわめて低いものとなる。実施は比?的容易であるものの,描画という多義的な反応について判断するにあたっては熟練を要し,これまでLMTの解釈には決まった指標が存在せず経験と直感に頼ることが多くなる(鷲岳,2006)。さらに,LMTはその性質上,描き手とそれを見守る治療者との関係性を土台としているために,その相互作用から生み出される結果の読み解きには様々な要因が複雑に入り組んでおり,基礎的な読み解きの指標ができにくい側面がある。しかし,その読み解きに関する信頼性を高め,技法に熟達していくためには,描画を読むための何らかの指標や手がかりを知ることも重要な手法である(鷲岳,2006)。言い換えると,LMTの読み解きに関して,実際には客観的指標なしに作品から書き手のメッセージを汲み取ることは困難であり,恣?明星大学心理相談センター??明星大学人文学部心理学科意的な解釈によって逆に描き手のメッセージを遠ざけてしまう危険性を孕むことになる(神薗,2011)。このように,LMTの読み解きには何らかの手がかりが必要となるが,他技法との比?は,そうした手がかりの発見に寄与するのである(鷲岳,2006)。しかも,LMTの表現が持つ独自性や可能性をさらに広げるためにも,他技法との比?が必要である(原,2004)。これまでLMTと他技法との比?についての研究は,バウムテスト,P-Fスタディとの比?(大石, 1988),Y-G性格検査,統合型HTPとの比?(皆藤,1994),箱庭療法との比?(皆藤,1994・井原,1993)があげられる。こうしたLMTと他技法との比?研究のほとんどは,心理療法過程およびその中での心的状況を理解する目的でなされたものである。ただし,LMTが投影法の一技法である以上,そこにどうしても客観的な枠組みが必要となるが,この辺りについてはまだ十分な成果を上げているとは言えず,この点からの検討が必要である(皆藤,2008)。しかし,これまでのLMT研究はその解釈に質的側面が強く置かれてきていることから,数量化や他の量的指標との関連による検討が少ない(皆藤,1994)。数量化風景構成法とその課題についてLMTにおける数少ない量的研究の方法として,数量化LMTチェックリスト(Landscape Montage TechniqueCheck-List,以下LMTCL)(石井・杉山・岩崎・臼井・緒