心理学年報31号 page 12/54

心理学年報31号

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心理学年報31号

8明星大学心理学年報2013年第31号方,1999)があげられる。もともとLMTCLは,精神科Day Treatment参加者の社会復帰へ向かう精神科リハビリテーションの目安として,チェックリスト方式による数量化の手法をLMTに導入したものである(石井他,1999)。LMTCL(石井他,1999)はLMTにおける指定描画アイテムごとに,精神科患者と健常者との間で有意差のあった描画指標が設定されており,LMTの描画内容が該当指標に合致すれば1点加算される採点システムとなっている。その結果,LMTCLの得点は風景が自然に描かれるほど高得点となり,統合失調症者を中心とする臨床群(統合失調症者16例,高機能自閉性障害者1例)の平均は23.12点,健常群の平均は36.67点であり,両者の境界は30点に設定されている(石井他,1999)。このLMTCLは,統合失調症者以外にも,精神的健康度を幅広く測定可能なGHQ28精神健康調査票(The General Health Questionnaire,以下GHQ)(長谷川,2004)とのテストバッテリーから,GHQの下位指標(身体的症状・不安と不眠・社会的活動障害・うつ状態)のうち,特にうつ状態に対する感度が高いとの報告がある(加納・堀・石井,2010)。しかし,LMTCLの下位指標とうつ状態との関連についての考察までには至っていない。LMTCLとのテストバッテリーについてLMTという非言語的な手法にみられる諸特徴の意味を考察し,それらについて仮説を作っていくためには,既に多くの仮説が実証されている心理検査の結果と比?することも必要である(弘田他, 1990)。そのような関連性を多角的に検証可能な検査の一つにロールシャッハ法がある。このロールシャッハ法には多くの実践技法が開発・施行されているが,とりわけ,包括システム(ComprehensiveSystem,以下CS)がグローバル・スタンダードとなっている(津川,2005)。CSの各変数とLMTとを比?していくことにより,客観的視点からLMTにみられる描画特徴を意味付けることが期待される(高桑,2005)。したがって,数量化されたアセスメント・ツールであるLMTCLと実証的な研究から導き出された解釈を行うCSとの関連性を検討することは,LMTCL各指標が反映する解釈仮説の構築に繋がるものと期待される。さらに,既述のように,LMTCLとGHQとの比?検討では,LMTCL各指標が反映する要素についての考察までには至っていない。したがって,LMTCLとGHQとの関連について,LMTCL下位指標を通して再考することで,LMTのより客観的な読み解きが可能になるものと思われる。そこで,本研究では,本法とCSおよびGHQとの関連から,LMTCL各項目が反映する解釈の指針を検討した。これにより,LMTCLは従来の質的・経験的解釈を補佐する一助となり,LMTを質的・量的観点を包含した相補的視点からの人間理解に繋げられることが期待される。方法1.対象と検査の施行対象は研究に協力しない場合でも不利益を被らないことなど研究に関する説明を受け,同意書にて協力を承諾した大学生および大学院生40名(平均年齢22.12歳SD=2.81)であった。検査の実施は,ロールシャッハ法,LMT,GHQの順で個別法にて行った。2.結果の処理方法まずLMTをLMTCLに従い数量化し,LMTCL総合得点および下位指標(各描画アイテム・チェック項目)の各得点を算出した。CSのコード化については,藤岡(2004)および高橋・高橋・西尾(2009)に準拠して行った。また,H:(H)や,W:Mといった比で示される変数については,右辺の値を分母,左辺の値を分子として除しその値を用いた。つまり,除した値が1よりも大きいほど,元の比では左辺の値が右辺の値より大きいことを示すことになる。このようにして算出されたLMTCL各指標と,CSの各変数・特殊指標との相関をSpearmanの順位相関係数により求めた。なお,Spearmanの順位相関係数を用いたのは,一般にCS変数およびLMTCL各変数ともに正規分布が仮定されていないためである。結果相関係数を算出した結果,LMTCL各指標とCS変数およびGHQ各尺度との間に,多くの相関関係がみられた。ただし,本研究においては,統計におけるtypeⅠerrorを防ぐために,考察の対象とする相関は,「比?的相関関係がある」と言えるr=±.4以上で,かつ母集団における再現性を担保するため,無相関検定の有意確率が1%水準以下で認められたものだけに限定した。1. LMTCLチェック項目とCS変数との相関関係についてLMTCLチェック項目とCS変数との間については,