心理学年報31号 page 16/54

心理学年報31号

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心理学年報31号

12明星大学心理学年報2013年第31号高くなるほど,Hが(H)に比べ高くなっている(Table1-2)。Hが現実に基づいた理解と関心の程度を表わす一方,(H)(想像された人間全体反応)は他者を客観的・現実的に理解しないで想像により捉えがちなことを示す変数である(高橋他, 2007)。したがって,性質・特徴の表現は,対人関係における興味関心,かつ現実的な対人関係で他者と交流ができているかどうかの程度を示唆していると考えられる。1-6動きについて動きでは,まず情報処理クラスターであるW:M(r=.551)とに正の相関がみられた。動き得点が高くなるほどWの値がMの値より高くなった(Table 1-2)。W:Mは,課題達成への努力(W)とそれを実現するために利用可能な資質(M)とのバランスを示す変数と解釈されている(藤岡,2004)。そのため,動き得点の高い者は目標水準達成に向けて必要以上の努力をしていることが推察される。その他,本研究では,統制クラスターであるEA(r=.550)とに正の相関がみられた(Table1-2)。EAは,意思決定や問題解決を適切に行うための資質や対処能力を示しており(高橋他, 2007),社会生活に対処する能力のなさを示すCDI(r=-.548)(高橋他,2007)とも関連している。さらに,H(r=.513)やGHR(r=.552)などの自己に対する良好なイメージや適切な対人行動とも正の相関がみられるように,LMTCLの動きは現実場面における対人交流を含んだ問題解決能力や,その資質を反映している可能性がある。1-7陰影表現について陰影表現では,情報処理クラスターのD(r=.521),統制クラスターのR(r=.598),感情クラスターのS(r=.593)などとに正の相関がみられた(Table1-2)。Dは物事を具体的・客観的に眺める傾向を表わしており(高橋他,2007),Rは生産性や心的エネルギーの高さを示している(Exner,2000中村・野田監訳,2002)。また,多すぎるSは頑固さや自己主張的な反抗的態度,怒りを適切に処理できないことを表わしている(高橋他, 2007)。しかし,適度なSは意志の強さや自己決定性を示していることが多く(高橋他, 2007),本研究で得られたSの平均値(3.07)は期待値(高橋他,2007)の範囲内であることから,Sの肯定的な意味合いが反映されたものと考えられる。つまり,Sは空白反応という名のとおり,ロールシャッハ法のインクブロットそのものではなく背景の領域に目を向けているので,通常とは異なる角度から刺激を眺めるという態度にも関連するのであろう。LMTCLにおける描画アイテムの陰影表現は,D,R,Sが示す活発な精神活動そして現実を客観的に吟味し把握する能力を反映しているのではないだろうか。1-8非記号化について非記号化では,情報処理クラスターのDd(r=.556),XA%(r=.592),WDA%(r=.561),P(r=.482)をはじめとした媒介クラスター,感情クラスターのFC(r=.466)と統制クラスターのR(r=.515)などとに正の相関がみられた(Table 1-3)。まず,Ddは課題解決にあたって情報を取り入れる時に通常とは異なるアプローチをする傾向を示す(高橋他,2007)。そして,適度なDdは環境への反応の仕方に可逆性があり,良い意味での完全性を反映している(高橋他,2007)。本研究で得られたDdの平均値(3.27)はその期待値(高橋他,2007)の範囲内であることから,このような解釈に準じた意味づけができるであろう。XA%とWDA%の高さは現実検討力を備え,慣習的な行動がとれることを表わしており,一般的な現実対処能力を反映している(Exner, 2000中村・野田監訳2002)。またFCは衝動の統制を行いつつ,感情を適度に表現できるといった情緒の安定性を示している(高橋他,2007)。さらに,この非記号化(豊かな表現)は心的エネルギーを表わすRとも正の相関関係にあることから,活発な精神活動に基づくものと考えられる。したがって,非記号化得点の高さは,描き手の精神エネルギー,情緒の安定性,現実検討能力,対処力を反映している可能性がある。1-9付加物について付加物では,S-(r=-.485)と3r+(2)/R(r=.474)に加えて,対人知覚クラスターであるCOP(r=.461)とにそれぞれ正負の相関がみられた(Table 1-3)。COPは対人交流への肯定的な見方を反映した変数である(吉村,2008)。そのため,豊かな付加物の表現はS-が示す衝動性を統制し,3r+(2)/Rの肯定的な自己評価や,COPの他者への協力的態度に繋がりやすいのではないかと考えられる。2.相関がみられたLMTCL描画アイテム及び全体評価・合計点・総合得得点とCS変数とについて2-1山についてLMTCL描画アイテムの山では,BlendsR(r=.563)とAG(r=-.554)とにそれぞれ正負の相関がみられた(Table 2-1)。従来の山に対する解釈仮説によると,山は理想と現実の隔たりを表わしていることが多く,乗り越えねば