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心理学年報31号

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加納・石井:風景構成法の客観的解釈に関する検討15における関係性が最も考慮される必要のあるアイテムであり,その読み解きには様々な要因が複雑に関与しているのかもしれない。そのように考えると,本研究で川アイテムとCS変数との関連性がみられなかったのは,両者が異なる次元の心理的側面を持ち合わせていたのとは別に,川の配置および他アイテムとの位置的関連を読み取る項目等が,LMTCLに設けられてなかったためであるかもしれない。したがって,この関係性の点はLMTを数量化する上で,今後の大きな課題である言える。3.相関がみられたLMTCLチェック項目とGHQ尺度とについてLMTCLの得点はLMTが自然に描かれるほど高得点となることに対して,GHQでは精神的健康度が高いほど各項目の得点が低くなるという逆転関係にある。本研究で得られた両者間の相関係数はすべて負の相関となっており,その逆転関係が実によく反映された結果である(Table 3)。これは先行研究(加納他, 2010)と同様の結果でもあり,やはり,LMTCLは精神的健康度の低下からもたらされるうつ状態に対して非常に感度が高いと言える。また,LMTCLチェック項目の中でも,特に着色および自然な着色はGHQ28合計得点・身体的症状・社会的活動障害・うつ状態のGHQ5項目(合計点含む)中4項目との関連性がみられている。したがって,特に着色や自然な着色得点の低さは,過度の疲労や体調不良,日常生活における活動上の何らかの失敗や,またはうつ状態に苛まれているなどの精神的健康度の低さからもたらされる問題を如実に反映している可能性が考えられる。引用文献Exner, J. (2000) :A Primer For Rorschach Interpretation.(エクスナー, J. E. Jr.中村紀子・野田昌道(監訳)ロールシャッハの解釈(第6版)中村紀子・野田昌道(監訳),(2002).ロールシャッハの解釈金剛出版)藤岡淳子(2004):包括システムによるロールシャッハ臨床エクスナーの実践的応用誠信書房長谷川恵美子(2004) : GHQ精神健康調査票氏原寛・岡堂哲雄・亀口憲治・西村洲衛男・馬場禮子・松島恭子(編),心理査定実践ハンドブック,創元社,pp. 458-461.原信夫(2004):エゴグラムとの比?による風景構成法の特徴について清和大学短期大学部紀要, 32,29-38.弘田洋二(1986):風景構成法の基礎的研究~発達的な様相を中心に~心理臨床学研究,3(2),58-72.弘田洋二・三船直子・原志津・岩堂美智子(1990):?風景構成法」に関する研究(その2)~ロールシャッハテストとの関連~大阪市立大学生活科学部紀要,38,1-9.井原彩(1993):風景構成法と箱庭における空間の表現の特徴について箱庭療法学研究, 6(2),38-49.石井雄吉・杉山晴子・岩崎麻美・臼井美保子・緒方亜津子(1999):風景構成法の数量化の試み―精神科リハビリテーションの目安として神奈川県精神医学会誌,49,59-64.伊集院清一・中井久夫(1988):風景構成法~その未来と方向性~臨床精神医学,17(6),957-968.皆藤章(1994):風景構成法~その基礎と実践誠心書房皆藤章(2008):風景構成法福西勇夫・菊池道子(編),現代のエスプリ,別冊(10月),pp.152-163.加納信吾・堀智子・石井雄吉(2010):数量化風景構成法との関連からみた風景構成法~数量化風景構成法とGHQ28とを用いて~神奈川精神医学会誌,59,11-18.神薗悦子(2011):青年期の風景構成法作品に表れる人物像と自己像の読み解きについて神戸大学発達・臨床心理学研究, 10,59-68.岸川雄介・南里裕美・西田紀子・正木大貴・上田英樹・福居顕二(2003) :青年期発症統合失調症患者のロールシャッハ・テストによる思考過程の分析~健常青年との比?において~京都府立医科大学雑誌,112(9),689-696.三浦麻依子(2003):風景構成法における人物像の特徴に関する研究北海道心理学研究,26,23-33.那須秀行(2009):風景構成法における付加物について~描き手の体験の語りから~佛教大学大学院紀要,37,109-126.大石勝代(1988) :風景構成法について?-P-Fスタディとの関連人間発達研究,13, 13-22.澤田和重・内田弘之・宮下久子(1993):風景構成法における「人物像」類型化の試み~表現の豊かさと運動性の視点から~下呂病院年報,20,19-22.高桑洋介(2005):風景構成法とロールシャッハ法との関連~「羅列型」を示した3事例の検討から~ロールシャッハ法研究,9,38-47.高橋雅春・高橋依子・西尾博之(2007):ロールシャッ