心理学年報31号 page 23/54

心理学年報31号

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柴崎:簡易型近赤外分光法装置の前頭葉機能リハビリテーションへの応用に関する実験的検討19Figure1実験1の刺激例。実験参加者は単語刺激が緑色の場合は単語刺激と同じ位置のボタン,単語刺激が赤色の場合は単語刺激と左右が逆の位置のボタンをできるだけ速く正確に押すよう求められた。灰色で書かれた単語刺激は緑色,白色で書かれた単語刺激は赤色で呈示されたことをそれぞれ示す。ずれも視角にして4.5°×4.5°)を刺激とした。刺激呈示と反応入力にノートパソコン(パナソニック,CF-YB),17インチ・カラー液晶ディスプレイ(三菱電機,RDT17135),外部スイッチ(Cedrus,RB-834),課題遂行中の実験参加者の脳血行動態の測定・記録に2チャンネル型NIRS装置(浜松ホトニクス,NIRO-200)を使用した。手続き実験参加者は観察距離約60cmの位置から画面を観察した。各試行では,黒色画面の中央に白色の凝視点(視角0.8°×0.8°)を1000ms呈示した後,刺激画面を700ms呈示した。実験参加者の課題は,単語刺激が緑色であった場合は単語刺激と同じ位置のボタン,単語刺激が赤色であった場合は単語刺激と左右が逆の位置のボタンをできるだけ速く正確に押すことであった。加えて,スイッチボックスの左側にあるボタンは左手,右側にあるボタンは右手を使って押すよう教示した。1つの課題ブロックにつきこれを20試行おこない,混合条件については,一致条件と不一致条件の各試行を10試行ずつランダムに呈示した。各課題ブロックの前後には30秒の安静時間を設け,個々の条件につき安静―課題―安静を1セッションとして3セッションずつ,計60試行ずつ実施した。3つの実験条件の実施順序は実験参加者間でランダムであった。各条件のいずれについても,本試行に先立ち,4試行からなる練習試行をおこなった。NIRSデータの測定実験参加者の前額部の2箇所(国際10-20法におけるFp1とFp2)に近赤外光の照射部と検知部を装着し,課題遂行中の前頭前野の脳血行動態を測定した。サンプリングタイムは0.5秒で,測定後のNIRSデータについては,5秒の移動平均処理を施した後,課題ブロック直前の10秒の平均ヘモグロビン濃度変化量を基準値とし,個々の測定値から基準値を減算するベースライン補正をおこなった。さらに,個々の実験参加者ごとに,各条件の3つの課題ブロックのヘモグロビン濃度変化量を加算平均した。NIRSデータのうち,酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)濃度変化量が脳血流の変化をもっとも反映すると考えられるため(Hoshi,Kobayashi,& Tamura,2001),本研究ではこれを分析対象とした。結果行動データ実験参加者が刺激画面の呈示からその直後のブランク画面の終了まで(刺激画面の呈示から1700ms以内)に正しく反応できた場合を正反応とした。Figure2は全実験参加者の平均誤反応率と正反応時の平均反応時間を条件別に示したものである。平均誤反応率と平均反応時間の両方において,一致条件,不一致条件,混合条件の順で数値が大きくなる傾向が認められた。これらの2つの指標に関して,課題の種類(一致,不一致,混合)を実験参加者内要因とする1要因分散分析をおこなったところ,平均誤反応率と平均反応時間のいずれについても課題の種類の主効果が有意となった(平均誤反応率:F(2,18)=10.15,p<.001,平均反応時間:F(2,18)=74.36,p<.001)。有意水準を0.05%に設定したうえでライアン法による多重比?をおこなった結果,平均誤反応率では,混合条件の平均誤反応率が一致条件や不一致条件に比べて有意に高いこと,平均反応時間については,すべての条件の一対比?の組み合わせにおいて有意差が認められることが明らかになった。