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心理学年報31号

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心理学年報31号

20明星大学心理学年報2013年第31号Figure 2実験1の各条件における平均誤反応率(左)と平均反応時間(右)。NIRSデータ全実験参加者の課題遂行中のチャンネル別条件別の平均oxy-Hb変化量をFigure 3に示した。この図から,左前額部及び右前額部の両方のチャンネルで,混合条件のoxy-Hb変化量が一致条件や不一致条件と比べて上昇していることがわかる。また,3つの条件ともに右前額部のoxy-Hb変化量が左前額部より全般に大きくなっており,特に,混合条件のときにこの傾向が目立った。これらのNIRSデータに関して,課題の種類(一致,不一致,混合)と部位(左前額部,右前額部)をそれぞれ実験参加者内要因とする2要因分散分析をおこなったところ,課題の種類の主効果が有意となり(F(2,18)=4.39,p<.05),ライアン法による多重比?の結果,混合条件のときのoxy-Hb変化量が一致条件や不一致条件と比?して有意に大きいことが見出された(p<.05)。さらに,部位の主効果も有意で(F(1,9)=10.73, p<.01),右前額部のoxy-Hb変化量が左前額部より有意に大きいことが明らかになった。課題の種類と部位の交互作用については有意傾向であった(F(2,18)=2.70,p<.10)。Figure3実験1の各条件における課題中の平均oxy-Hb濃度変化量。考察はじめに,行動データの結果に関して,平均誤反応率と平均反応時間の両方において一致条件,不一致条件,混合条件の順に数値が高くなる傾向が認められ,とりわけ,混合条件の場合に,平均誤反応率と平均反応時間のいずれについても他の2条件より有意に値が高くなった。混合条件では,認知的葛藤がない一致条件と認知的葛藤が生じる不一致条件の各条件の試行がランダムに呈示されるので,個々の試行では,それに先立つ先行試行からの干渉を他の2条件より受けやすくなる。たとえば,一致条件の試行の後に不一致条件の試行が呈示された場合の認知的葛藤の度合いは,不一致条件の試行のみが単独に呈示される不一致条件の場合より大きくなると考えられ,これに伴って,課題遂行に要求される反応抑制の量も混合条件において最大になると思われる。このことが,混合条件のときに実験参加者の遂行がもっとも低下したことと関係しているのであろう。また,平均反応時間では,不一致条件のときに一致条件より有意に平均反応時間が長くなったことをあわせると,実験1で用いたSRC課題においては,一致条件,不一致条件,混合条件と反応抑制が要求されるに従って行動測度上にあらわれる実験参加者の遂行も低下したといえる。次に,NIRSデータについては,一致条件と不一致条件の間でoxy-Hb変化量に有意差が認められなかったものの,3つの条件のなかで反応抑制がもっとも求められる混合条件のときに,他の2条件と比べて有意な血流上昇が観察された。そのため,本研究でおこなったような前額面の2チャンネルでの血流測定においても,反応抑制と関係深い背外側前頭前野をおそらく起源とする血流変化をとらえることができたと考えられる。他方,半球差に関しては,全般に右前額部に有意な血流上昇が認められ,特に,この傾向は反応抑制が