心理学年報31号 page 25/54

心理学年報31号

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柴崎:簡易型近赤外分光法装置の前頭葉機能リハビリテーションへの応用に関する実験的検討21最大となる混合条件のときに顕著であった。SRC課題に関するfMRI研究では,刺激の位置と反応の位置が一致しない葛藤条件下で,右背外側前頭前野を中心とした賦活が確認されており(Casey, Thomas, Davidson,Kunz, & Franzen, 2002, Cieslik, Zilles, Kurth, & Eickhoff,2010,Schumacher & D’Esposito,2002,Schumacher,Elston,&D’Esposito,2003),さらに,SRC課題と同様の反応抑制課題であるgo/nogo課題においても右背外側前頭前野の関与が報告されている(Aron & Poldrack, 2006,Coxon,Stinear,& Byblow,2009,Goghari& MacDonald,2009,Konishi, et al.1999,Leung & Cai,2007,McNab,et al.2008)。Zheng,Oka,Bokura,& Yamaguchi(2008)は,実験参加者にgo/nogo課題などの複数の反応抑制課題を課した際に,右背外側前頭前野が共通に賦活し,加えて,行動的な遂行とも相関したことを明らかにしたうえで,同領域が反応抑制の実行にかかわる神経ネットワークの鍵となる部位と結論づけた。実験1においては,前額部の測定であっても,反応抑制が強く必要とされる事態で,先行研究と一致した右半球優位の結果が得られており,この点においても,実験1でとらえた認知的葛藤事態の血流上昇が反応抑制機能にかかわるものであることを示唆している。実験2目的実験2では,武澤・宮谷(2007)にならい,単語刺激の呈示位置(左または右),単語刺激のあらわす位置(左または右),実験参加者の反応の位置(左または右)の3つの変数を操作するSRC課題を用いて,課題遂行中の実験参加者の前額面の脳血行動態を16チャンネル型NIRS装置により測定した。方法実験参加者健常な視力または矯正視力をもったエジンバラ利き手検査による平均利き手指数が93.2の16名の右利き大学生(男性4名,女性12名,平均21.5歳)を実験参加者とした。実験計画単語刺激の呈示位置,単語刺激のあらわす位置,反応の位置の3つの変数の一致性に関して,これらの3つが全く競合しない非競合条件,単語刺激の呈示位置と反応の位置は一致するが,単語刺激のあらわす位置と反応の位置が一致しない低競合条件,刺激の呈示位置と単語刺激のあらわす位置が反応の位置とそれぞれ競合する高競合条件,非競合条件,低競合条件,高競合条件の各試行がランダムに出現する混合条件の4つの条件を設けた(Figure 4)。刺激と装置黒色画面の左側または右側に呈示された赤色または緑色の漢字で書かれた単語「左」または「右」(いずれも視角にして4.5°×4.5°)を刺激とした。刺Figure4実験2の刺激例。実験参加者は単語刺激を口頭で読み上げつつ,単語刺激の色が赤色であれば左側,緑色であれば右側のボタンをできるだけ速く正確に押すよう求められた。白色で書かれた単語刺激は赤色,灰色で書かれた単語刺激は緑色で呈示されたことをそれぞれ示す。