心理学年報31号 page 29/54

心理学年報31号

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柴崎:簡易型近赤外分光法装置の前頭葉機能リハビリテーションへの応用に関する実験的検討25して,左前額部のすべてのチャンネルにおいて顕著であった。さらに,左前額部のチャンネル10,12,13,15,16では,混合条件のときに,oxy-Hb変化量が他の3つの条件と比?してもっとも高くなった。これらのデータに関して,チャンネルごとに課題の種類を実験参加者内要因とする1要因分散分析をおこなった結果,チャンネル10,12,13,14,15,16において課題の種類の主効果が有意となり(チャンネル10:F(3,45)=3.29,p<.05,チャンネル12:F(3,45)=3.84,p<.05,チャンネル13:F(3,45)=4.39, p<.01,チャンネル14:F(3,45)=4.86,p<.01,チャンネル15:F(3,45)=3.84,p<.05,チャンネル16:F(3,45)=3.73, p<.05),ライアン法による多重比?をおこなったところ,チャンネル14では,高競合条件と混合条件のoxy-Hb変化量が非競合条件や低競合条件と比?して有意に高いこと,チャンネル12,13,16では,混合条件のoxy-Hb変化量が非競合条件や低競合条件より有意に高いこと,チャンネル15では,混合条件のoxy-Hb変化量が非競合条件と比べて有意に高いことがそれぞれ明らかになった(いずれもp<.05)。チャンネル10については主効果のみが有意であった。次に,課題遂行時の脳血行動態の半球差について検討するために,右半球チャンネル(チャンネル1から7)と左半球チャンネル(チャンネル10から16)のoxy-Hb変化量の平均値を算出した(Figure 7)。図に示したように,混合条件のときに左前額部のoxy-Hb変化量が右前額部より高くなり,加えて,左前額部においては,混合条件のoxy-Hb変化量が他の3つの条件に比べてとりわけ高くなった。Figure 7のデータに関して,課題の種類(非競合,低競合,高競合,混合)と部位(左前額部,右前額部)をそれぞれ実験参加者内要因とする2要因Figure7実験2の各条件における課題中の平均oxy-Hb濃度変化量(半球ごとの分析)。分散分析を実施したところ,課題の種類の主効果と課題の種類と部位の交互作用がおのおの有意となった(課題の種類の主効果:F(3,45)=2.92, p<.05,課題の種類と部位の交互作用:F(3,45)=5.54,p<.005)。このうち,課題の種類の主効果については,ライアン法による多重比?の結果,どの条件の組み合わせにおいても有意差は認められなかったが,課題の種類と部位の交互作用に伴う単純主効果検定では,混合条件のときに,左前額部のoxy-Hb変化量が右前額部より有意に高いこと,また,左前額部において混合条件のoxy-Hb変化量が非競合条件と低競合条件に比べて有意に高いことがそれぞれ示された(p<.05)。考察まず,行動データの結果では,平均誤反応率と平均反応時間の両方において,混合条件のときに他の3つの条件と比?して大きく上昇する傾向が示された。実験2においても,課題遂行に要求される反応抑制の量は,認知的葛藤がない非競合条件と,認知的葛藤が生じる低競合条件と高競合条件の3つの条件の各試行がランダムに呈示される混合条件の場合に最大になると考えられ,このことが同条件において実験参加者の遂行がとりわけ低下したことと関係していると思われる。一方,同じ認知的葛藤事態であっても,低競合条件と高競合条件については,平均反応時間に関しては高競合条件と非競合条件との間に有意差が認められたものの,混合条件の場合と違って,これらの2つの葛藤条件下での個々の実験参加者の遂行が非競合条件と比べて極端に低下することはなかった。また,低競合条件と高競合条件の比?においても,2つの条件間で有意な遂行差は認められなかった。そのため,実験2に参加した実験参加者にとっては,低競合条件と高競合条件は,認知的葛藤事態といえども比?的容易な実験事態であったことが想定され,行動測度上では,これらの2条件間の遂行差や非競合条件との間の遂行差が天井効果のためにあらわれにくくなったと考えられる。他方,NIRSデータの結果では,行動データで顕著な傾向が認められた混合条件に加えて,低競合条件よりも認知的葛藤が大きくなると考えられる高競合条件のときにも全般に血流が上昇し,特に,左前頭部背側寄りのチャンネル14では,混合条件にあわせて高競合条件のoxy-Hb変化量が非競合条件や低競合条件より有意に高くなった。このことは,行動測度と対照的に,脳血流測度上では低競合条件と高競合条件の2つの葛藤条件を区別したことが効果的であったこと,すなわち,実験2の課題においては,脳血流測度のほうが行