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心理学年報31号

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明星大学心理学年報2013,No.31,29―33資料発達障害児の行動傾向と保護者のストレスの関係に関する研究?宮田昌明?竹内康二??本研究では,公立小学校の情緒障害学級(通級)に通う発達障害児の保護者を対象に,保護者のストレスを調べる質問紙とConners3の2種類の検査を行い,保護者のストレスと子どもの行動特徴の関係を明らかにすることを目的とした。その結果,保護者のストレスととても高い相関が見られたのは子どもの多動性・衝動性という特性であり,ある程度の相関があったのは実行機能,攻撃性,友人関係であった。一方,相関が見られなかった特性は不注意と学習の問題であった。同じADHDの行動特徴であっても,多動性・衝動性と不注意では保護者のストレスに関連する程度は大きく異なることや,以外にも学習の問題が保護者のストレスに相関しないことについて考察した。キーワード:発達障害,QRS,Conners 3現在,障害児者の自立や社会参加に向けた主体的な取り組みを支援することが重要であるとされているが,その障害児を最も身近で支えているのは家族であろう(武蔵・式部,2004)。家族は障害児支援の重要な担い手である一方で,生活の中で様々な心理的な困難や身体的負担を持つことになる。障害児をもつ家族のストレスは定型発達児を育てる家族に比べて高く,特に母親の育児ストレスは定型発達児をもつ母親よりも高い(稲浪・小椋・ロジャーズ・西,1994)。また,広汎性発達障害児(以下PDD児)をもつ母親の育児ストレスは他の障害児をもつ母親と比?して高いことも指摘されている(岡野・武井・寺崎,2012)。PDD児の多くは,親の側からすると養育に困難を感じることが多く,そのストレスで母親自身が絶えず不安でいらいらし,親子で悪循環に陥ることが考えられる。田宮・大塚(2005)は,比?的軽度な発達障害児の母親が感じる養育困難の理由として,1アンバランスさの理由がなかなかつかめないこと,2子どもとの関係がとりにくいこと,3周囲の人間から非難されやすいこと,4軽度ゆえに専門家の援助が受けにくいことの4つの点を挙げている。このように,いわゆる親のストレスは子どもの発達的要因だけでなく社会的環境やサポート資源とも関係?明星大学人文学研究科心理学専攻??明星大学人文学部心理学科?本研究は科学研究費補助金(基盤研究C,課題番号:23531311)による助成を受けた。?本研究の実施やデータ処理に関しては,明星大学人文学部心理・教育学科心理学専修の牧野泰晃さんと押金正紘さんにご協力いただきました。心より御礼申し上げます。が深いことが示唆されているが,具体的にどのような子どもの行動特徴が親のストレスに関連しているのかを詳細に検討した研究は少ない。発達障害と言っても,個々の子どもが示す行動特徴は多様であり,一概に親のストレスが高いということはできないと思われる。親のストレスの原因を子どもの障害に帰属させるのではなく,子どもの示す特定の行動特徴に求めなければ,親のストレスに対しての焦点の定まった支援を検討することができない可能性がある。一方,子どもの行動特徴を詳細に分析するための比?的新しい質問紙としてConners3??日本語版(以下Conners3と省略する)がある。Conners・田中・坂本(2011)によると,Conners3は小児期から青年期の注意欠陥・多動性障害(ADHD)と,ADHDと共存する可能性の高い問題や障害を重点的かつ綿密に評価するスケールである。数種類のスケールで構成されるConners3では,ADHDだけでなく,実行機能,学習上の問題,攻撃性,友人?家族関係など,ADHDと関連性の高い諸問題も評価される。ADHDのほか,共存する可能性が極めて高い破壊的行動障害(素行障害[CD]および反抗挑戦性障害[ODD])についても,DSM-IV-TRの診断基準に準拠したスケールが設定されている。また,問題行為の危険性項目や,ADHDと共存することの多い不安や抑うつといった内在的な問題のスクリーニング項目が設けられていることもConners3の特徴である。また,Conners 3は,本人用,教師用,保護者用と三者の記入に対応できるようになっており,保護者が記入することで親の視点で子どもの行動特徴を分析することができる。そこで本研究では,公立小学校の特別支援学級(通級