心理学年報31号 page 8/54

心理学年報31号

このページは 心理学年報31号 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
心理学年報31号

4明星大学心理学年報2013年第31号Figure 3不適切行動および制止時間の推移ure 3で示された標的行動の生起時間の推移を概観すると,言語での注意や刺激制御のみを行っていたベースライン期では,10分あたり200秒以上,第4セッションでは438秒も見られた不適切行動が,ビデオセルフモニタリング手続きを導入した介入期に入ると200秒まで減少していた。そして,介入期2回目(第6セッション)では不適切行動が全く見られなくなり,第7セッションで微かな上昇傾向を示したが,ベースライン期と比?して大きく減少傾向を示していた。次に参加児の不適切行動の制止時間を見ると,参加児の制止時間はベースライン期では高い水準を維持していたが,介入期に入ると大きく低下していた。不適切行動と同様に,介入期後の第6セッション以降には大きな減少傾向を見せていた。最後に不適切行動の推移と参加児の制止時間の関係を合わせて見ると,不適切行動の継続時間が低くなることに合わせ,参加児の制止時間も低下していた。考察本研究は,アスペルガー障害のある児童の行動問題に対して,ビデオセルフモニタリング手続きが不適切行動の制御に与える効果の検討を目的とした。結果,ベースライン期では不適切な行動が多く観察された参加児が,ビデオセルフモニタリングを利用することで不適切行動が大幅に改善された。更に,この効果はビデオセルフモニタリング導入直後から起こっており,段階的な学習ではなく,即時の効果が期待できると考えられる。そして,不適切行動の低減と合わせて,参加児が注意を受けてから不適切行動を止めるまでの時間も少なくなるといった結果が得られた。以上の結果から,本研究で使用した介入計画が,他者からの注意や注目によって維持されている児童の不適切行動を即時に低減させるだけでなく,指導者からの叱責や指示に従事しない状況の改善にも大きく寄与したと考察される。すなわち,指導者からの注意や指示を適切な行動の弁別刺激として機能化することができたと言えるだろう。つまり,適切な行動レパートリーを備えていながら適切な刺激性制御下に置かれていない行動問題への介入について,ビデオセルフモニタリング手続きが非常に有用であったと考える。今回の研究結果から,モニタリング手続きに必要であると言及されているバックアップ強化子やモニタリング手続き自体への外的な強化手続きが,必ずしも必要でない可能性を示唆している。これは太田(2010)の研究を支持する結果であった。不適切行動の制御にバックアップ強化子が必要なかった点については,いくつかの仮説が考えられる。1点目は,モニタリングシートに自己行動を記入すること自体が強化子として機能していたことである。モニタリングシートで良い評価が得られることで,不適切行動を抑制する何らかの行動を自己強化していたことが推察される。実際にビデオモデリング場面において参加児は,「全部1点に