ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

20明星大学心理学年報2014年第32号を利用した行動修正プログラムを導入した。このプログラムの効果から,重篤な知的障害を持った児童に対するビデオフィードバックの有効性,並びに臨床適用の可能性について検討する。方法1.参加児童と問題の整理本研究では,研究開始時6歳5ヶ月のA児(以下A)を実験参加児とした。Aは2歳前後より初語がない,保護者が名前を呼んでも反応しない,常同的な行動を繰り返す(手を目の前でひらひらする,鼻の頭を何度もこする)などの発達の遅れや行動特徴を主訴に専門機関を受診し知的障害を伴う自閉性障害の診断を受けていた。知能検査は実施されていなかったが,療育セッション開始当時,機能的な言語は5種類程度,2語文はほとんど使えない状態であった。要求言語については,周囲の大人が言語プロンプトを出せば,それに合わせた言葉を使うことはできていた。しかしながら,自発的に機能的な言語を使用する場面はほとんど見られなかった。保護者の発達の相談と,コミュニケーションや問題行動の低減を主訴に,X年より大学の療育プログラムに参加していた。大学では,行動分析の知見を利用した機会利用型の指導(自由遊び場面を通じた機能的言語行動の獲得と増加)と,机上学習(マンドおよびタクト訓練)などから構成される療育プログラムに参加していた。機会利用型の指導場面でのAの行動レパートリーは,動物フィギュアを高い所から落とす,クッションを重ねてアスレチックを作る,高く積み上げたクッションから飛び降りるなどの感覚遊びが中心であった。保護者からの報告からあった通り,療育開始時には自由遊び場面での機能的言語の自発はほとんど見られなかった。また,療育セッション以外の場面で「知らない人の身体を触る」といった行動問題が散見されていた。特に女性を触ってしまうことが多く,保護者が言語で注意しても改善は見られなかった。この身体に触れる行動は,療育セッション内でもセッション補助を行っていた大学院生に対して頻繁に行っていた。2.標的行動本研究では,療育セッション中に見られた“女性の身体を触る行動”を標的行動とした。女性の身体を触る行動とは,「要求の機能を伴わない身体への接触」と操作的に定義した。また,手での接触行動以外(身体がぶつかるなど)は,日常場面でほとんど見られないという保護者からの情報があったため,標的行動からは除外された。3.介入場面大学のプレイルームで行われていた療育セッションのうち,機会利用型指導場面を介入場面として設定した。自由遊び場面のセッティングをFigure1に図示した。大学プレイルームは縦10m×横6mほどの部屋であった。図示したように,プレイルームには玩具棚,水道,平均台や跳び箱,70cm×70cm程度のクッションなどが用意されていた。玩具棚には,小さな動物のフィギュア,ミニカー,建物のミニチュアなどが陳列されていた。また,棚の上部には,縄跳びやカラーボールなどの運動で使用する用具が置いてあった。平均台は3mのものが2本,跳び箱は5段および平らな技巧台が5つプレイルームの床に設置してあった。クッションについては,丸クッションが3つ,四角クッションが3つの計6つのクッションがそれぞれ重ねられてあった。その他には,個別課題で使用する机とイス,ホワイトボードが置かれていた。なお,セッションとAの様子を記録するため,Aが入室した後,ポータブルビデオカメラを三脚で固定し,入り口のドアから室内を撮影していた。4.研究デザインと介入方法本研究では,ビデオフィードバックによる介入効果を測定するために,介入前,介入後のパフォーマンスの比?から構成される介入前後比?デザインを適用した。介入前後共に,通常の機会利用型指導場面での関わりを行った。Aは何か指示を与えられることはなく,好きな遊具にアクセスすることができた。その中で,援助要求を通じた言語の獲得や,運ぶ事が難しい遊具(平均台や跳び箱)を要求する行動の獲得などが支援目標として設定されていた。支援目標を達成するために,2名~5名(女性1名男性1~4名)の大学院生がサブトレーナーとして入室していた。サブトレーナーは,適切な言語要求のプロンプト提示(「そういう時は,なんて言うんだっけ?」など),適切な要求行動が生起した場合の物品や活動の提供を担っていた。指導場面の総時間数はセッション数によってばらついていたが,15分前後~30分程度であった。第1セッション,第2セッションでは,Aの身体接触の頻度を見る為に,言語での注意のみを行った。第3セッションの機会利用型セッションの前半が終わった段階で,ビデオフィードバック手続きを導入した。ビデオフィードバック手続きでは,まずAを個別指導で使用している座席に着席させた。着席した後,メ