ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

22明星大学心理学年報2014年第32号Figure 2 Percipient’s performance害児が示す一般的な対応では修正されない不適切な行動に対して,ビデオフィードバックを適用した。結果,ビデオフィードバック手続きの導入後に顕著な改善効果が確認された。このことから,知的なハンディキャップが大きい児童でもビデオフィードバックによる行動修正の可能性が示唆された。加えて,ビデオフィードバックを1度導入したのみで,問題行動の生起頻度は0回の水準まで減少していた。Aは日常生活において保護者から何度も言語での注意を受けていたにも関わらず,その行動は低減していなかったとの報告が成されていた。そのような強固な行動問題に対しても大きな改善効果が見られたことから,ビデオフィードバック手続きによる行動修正には,一般的な問題行動への対応よりも遥かに顕著な改善効果を備えていると考えられる。更に,ビデオフィードバック導入後の第5セッションで不適切行動が1回見られたが,再度ビデオフィードバック手続きを導入したことで,その後4ヶ月に渡り介入効果が維持された。本研究の介入効果が長期に渡り維持されたことから,自己行動のビデオを視聴し自己評価するというビデオフィードバック手続きが,単なる適切行動の弁別刺激や罰刺激として機能したのではなく,継続性のある強固な学習が成立していたと考えられるだろう。今回の研究では客観的なデータとして明示されていないが,ビデオフィードバック後の参加児Aについて興味深い行動が2点観察された。1つ目は,不適切行動を途中で止め,「触りません」と自己教示を行っている様子が観察されたことである。自己教示により行動を制止していることから,ビデオフィードバック手続きが参加児のルール形成を促した可能性が示唆される。言語での注意やプロンプトでは機能化されなかったルールがビデオモニタリング手続きで形成されたことは,ビデオモニタリング手続きが,知的側面の難しさや自閉傾向の強さから言語的なルールによる行動調整や行動修正の難しい重篤な行動問題への適用可能性を持っていると言えるだろう。2点目は,ビデオフィードバックで使用した動画への注視行動が長時間持続されていたことである。参加児は個別指導場面でも注視行動を維持することが難しく,トレーナーが頻繁に注意を向けるようなプロンプト(呼名,身体接触など)を提示する必要があった。しかしながら,自己行動を写したビデオ動画については,提示している間に注視行動が途切れることなく,視聴終了まで画面を注視し続けている様子が観察された。このように今回のビデオフィードバック手続きでは,榎本(2011)の先行研究で示唆されている注目を得やすいというビデオ教材の利点を支持する結果が得られた。以上,本研究で実施したビデオフィードバックについて考察を行った。今後の研究では,より一層の臨床適用性を拡張するために,ビデオフィードバック手続きの効果を示す限界吟味が必要となるだろう。具体的には,知的能力水準や行動特性および障害特性などの被験者要因,提示方法や撮影場面などのビデオ教材要因などが考えられる。上記の要因を吟味することが,より一層効果的なビデオフィードバック手続きの開発および拡張に寄与すると考える。引用文献Buffington,D.M.,Krantz,P.J.,McClannahan,L.E.& Poulson,C.L. (1988). Procedures for Teach-