ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

明星大学心理学年報2014,No.32,25―30資料デンショバトの線分刺激による多次元性刺激性制御茅野一穂?小美野喬??白色光を背景刺激とし,角度,長さ,および本数の3つの次元を持つ黒色の線分刺激を正刺激(S+),線分を持たない刺激を負刺激(S-)としたmultVI・EXTの弁別訓練を行い,継時弁別訓練後の般化テストにより,線分刺激の持つ各次元に対する刺激性制御の程度を検討した。般化テストとして,角度般化(角度のみ異なる4種の線分刺激・S+・S-,合計6種),長さ般化(長さの異なる4種の線分刺激・S+・S-,合計6種),本数般化(本数のみ異なる4種の線分刺激・S+・S-,合計6種)の3種類を行った。その結果,角度般化ではS+を頂点とし勾配の傾きが急な凸型の般化勾配を示したが,長さ般化や本数般化ではS+を頂点としない勾配の傾きが緩やかな凸型の般化勾配を示した。これらの結果は,線分刺激が持つ3つの次元によって刺激性制御の程度が異なることを示し,角度次元の刺激性制御は,本数次元や長さ次元の刺激性制御に比べて強いことが明らかとなった。キーワード:刺激性制御,線分刺激,般化勾配,デンショバトヒトを含めて動物(生活体)が外部世界をどのように知る(認識する)のかといった問題は,行動分析の視点から,刺激性制御の問題としてとらえられてきた。刺激性制御には生得的側面と学習的側面があるが,生活体が自ら環境に働きかけるといった特性を持つオペラント行動については,刺激性制御を学習性の弁別行動としてとらえ,様々な実験的行動分析が行われてきた。外部世界は,複数の事象間の総合体とみなされるが,研究対象の操作可能性といった視点から単純化される。外部世界の諸特性のうち,日常生活に密着した事象として,特に「見る」ことのできる環境の特性は,物理的次元である「色」,「形」,「大きさ」,あるいは「傾き」などにより記述され,これらの特性に特化して実験的行動分析が行われる。実験的行動分析は,被験体としてヒト以外の動物(例えば,サカナ,ハト,ネズミ,サルなど)を用いることが多く,このような被験体による厳密な実験統制の可能性をもとにして,弁別行動の基本的な側面を明らかにしてきた。ハトを被験体とした場合,刺激次元として色光刺激や線分刺激が多用されてきた。Guttman & Kalish(1956)は,単色の色光刺激をつつくようハトを訓練した後,刺激般化テストにおいて様々な色光刺激を呈示して,各色光刺激に対する反応数を測定した。その結果,訓練で用いた色光刺激を頂点とする凸型の般化勾配が得られ,これによってハトは色光刺激の弁別が可能であることを示した。Honig,Boneau,Burstein,&?明星大学常勤准教授??明星大学教授Pennypacker(1963)は,特定の角度を持つ線分刺激を訓練に用い,その後の刺激般化テストにおいて様々な角度を持つ線分刺激を呈示した。その結果,訓練に用いた線分刺激を頂点とする凸型の般化勾配が得られ,ハトは線分刺激の角度弁別が可能であることを示した。さらに,より複雑とされる刺激,例えば,絵画や写真といった刺激についても,ハトはそれらの弁別が可能であることが明らかになっている。絵画刺激のように複雑な刺激を用いた研究例として,Watanabe, Sakamoto, & Wakita(1995)は,8羽のうち,4羽のハト(モネ群)に,画家モネが描いた絵をつつくと強化(エサの提示)し,ピカソの絵をつつくと消去(エサを提示しない)するといった弁別訓練を行い,残りの4羽のハト(ピカソ群)には,ピカソの絵を強化し,モネの絵を消去するといった弁別訓練を行った。弁別訓練の結果,モネ群はモネの絵をつつくがピカソの絵はつつかなくなり,ピカソ群はピカソの絵をつつくがモネの絵はつつかなくなった。つまりモネ群もピカソ群も,モネの絵とピカソの絵の弁別ができた。弁別完成後の刺激般化テストにおいて,テスト刺激として弁別訓練に用いていなかったモネの絵やピカソの絵を呈示すると,モネ群は,初めて見たモネの絵をつつき,同様にしてピカソ群は,初めて見たピカソの絵をつついたのである。これらの結果から,ハトが刺激般化テストで絵画を弁別できたのは,絵画がもつ色・明暗・輪郭・形などのうちの特定の刺激次元を手がかりにしたのではなく,それらによって構成される複合的な刺激次元によって弁別がなされたと考えられた(渡辺,