ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

26明星大学心理学年報2014年第32号2010)。写真刺激を用いた研究として,例えば,Gibson,Wasserman,Gosselin,& Schyns(2005)は,2種類の表情(笑った顔と真顔)と性別(男性顔と女性顔)からなる4通りの顔写真刺激を使い,4羽のうちの2羽のハト(表情群)には性別に関わらず,一方の表情の顔写真が呈示されたあとは緑色の領域をつつくと強化し,他方の表情の顔写真が呈示されたあとは赤色の領域をつつくと強化するという表情の弁別訓練を行った(強化される色の領域はハトによって異なった)。同様にして,残りの2羽のハト(性別群)には表情に関わらず性別の弁別訓練を行った。弁別訓練の結果,表情群は2種類の表情に応じて,適切な色領域を選択し,性別群も性別に応じて,適切な色領域を選択した。つまり,表情群は表情の弁別ができ,性別群は性別の弁別ができた。その後,バブル(bubbles)手続きにより刺激般化テストを行った。バブル手続きでは,弁別訓練と同じ写真刺激の一部を覆った刺激をテスト刺激として用いた。刺激般化テストの結果,表情群は顔の下部「口」周辺部を主につつき,性別群は「眼」の周辺部と「あご」を主につついた。これらの結果は,表情の弁別と性別の弁別とでは手がかりとして用いられる顔の部位が異なることを示しており,表情または性別と特定刺激とが等価な関係であることを示唆している。絵画や顔写真といった刺激は,様々な刺激次元により構成されていると考えられる。例えば,顔写真では,眉,目,鼻,口,輪郭などの各部位が形や大きさの刺激次元を構成し,各部位の空間的配置なども,また刺激次元を構成している。そのため,顔写真は多次元的な刺激とみなすことができる。したがって,顔写真のそれぞれの刺激次元は等価性の関係を含んでいる(例えば,Sidman,1994)。一方,刺激性制御の研究で伝統的に用いられている色光刺激や線分刺激は比?的単純な刺激次元により構成されていると考えられてきた。すなわち,色光刺激は,波長や振幅といった物理的な連続量に基づいて構成されている。同様に線分刺激は,角度といった物理的な連続量に基づいて構成されているとみなされるかもしれない(例えば,Bloomfield,1967)。線分刺激は,角度以外にも長さ・太さ・本数,さらに複数線分刺激であれば線分間間隔・明度・面積といった様々な次元により構成されている。しかしながら,線分刺激を用いたこれまでの研究は,線分刺激を構成する1つの次元である角度次元に関する研究がほとんどであって,それ以外の構成次元に関する系統的な研究はなされなかった。したがって,本研究の目的は,線分刺激の構成次元のうち角度,長さ,および本数の3つの次元について,刺激性制御の程度を検討することである。そのため,3つの次元を持つ黒色線分刺激をS+(訓練時,反応が強化される刺激),線分を持たない刺激をS-(訓練時,反応が消去される刺激)とした弁別訓練を行い,弁別完成後に,3つの次元について個々の次元における刺激般化テストを行った。なお,本研究は,弁別訓練と3種類の刺激般化テストの全てを同一個体が行うに際し,3つの次元による刺激般化テストの順序効果を除外するために単一被験体法を適用した。方法被験体VI強化スケジュールの実験歴のあるデンショバト3羽(MP9504, MP0509, MP1008)を被験体として用いた。いずれの被験体も,自由摂食時の80%に体重を統制した。飼育は個別ゲージで行われ,実験後80%体重を維持するために混合飼料を与えた。実験期間中は,飼育室において,水の摂取が自由であった。装置抵抗膜方式タッチスクリーンを操作体としたオペラント箱(51×38×51cm)を用いた。反応領域はタッチスクリーン上の直径22cmの円内とした。反応領域の中心は,オペラント箱前面の左右中央,床から21cmの高さとなるようにした。餌箱はオペラント箱後面の外部に取り付け,後面の左右中央,床から10cmの高さにある矩形開口部(4.5×5.5cm)により強化子である麻の実を摂取できるようにした。強化子呈示時間は被験体の反応遂行の程度に依存して,MP 9504は5秒,MP 0509は8秒,MP 1008は4秒とした。タッチスクリーンとして,抵抗膜方式タッチパネル搭載のパソコン用15型(15inch)液晶カラーディスプレイ(グンゼ製:AV7629FT03・AV7630FT02・AV7629N02W)を用いた。タッチスクリーンの分解能は4096×4096であり,タッチ反応の検出力は1秒間に最大23回,作動力は10~80gであった。なお,タッチスクリーンの耐久性を補強するため,スクリーン表面上に液晶保護フィルム(サンワサプライ製:LCD-15NH)を装着した。実験の制御,およびつつき反応の記録は,実験室外に設置したノート型パソコン(DELL製:LatitudeD600・D610)により行った。実験のプログラムはVisual Basic(VB ver.6,Microsoft製)により作成した。実験中は,自作のノイズジェネレータにより実験室内に設置したスピーカーからホワイトノイズを呈示し,外部音を遮断した。