ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

茅野・小美野:デンショバトの線分刺激による多次元性刺激性制御29元の刺激性制御が角度次元の刺激性制御より弱いことを示している。本数次元の般化勾配は,長さ次元の般化勾配と同様,勾配の傾きが緩やかな凸型を示した。したがって,角度次元,長さ次元,および本数次元は,同一の強化が操作されていても,刺激性制御が次元により,強化効果が異なることを示している。ただし,MP 0509の般化勾配は,テスト刺激の本数が多くなるにつれて増加した。したがって,各次元に対する刺激性制御の働きは被験体によって異なる可能性が示唆された。相対反応率が刺激性制御の量的分析とすれば,反応位置分布は,刺激性制御の質的分析といった側面からの分析が可能である。本研究結果は,S+に対する反応位置分布について,弁別訓練時と般化テスト時で類似することを示した。すなわち,刺激次元が角度,本数,または長さというように次元が異なるにもかかわらず反応位置はほぼ一定となる傾向を示した。すなわち,S+への反応は線分刺激の下部近辺に集中して出現した。この反応傾向の一部は,オペラント強化効果に加え,サイン・トラッキング(sign-tracking)効果による説明が可能である。サイン・トラッキング効果とは強化の信号となる刺激に対して反応が追随するという現象である(Hearst &Jenkins,1974)。サイン・トラッキング効果はレスポンデント強化随伴性によって生じるため,本研究結果の反応位置分布の一部は,レスポンデント行動による刺激性制御とみなすことができる。S-に対する反応位置分布については,全体的に反応数が少ないものの,弁別訓練および般化テストのいずれにおいても同じ位置に反応が出現する傾向が認められ,この傾向は刺激次元が異なっても同一であった。すなわち,S-に対しては,あたかもS+を含む線分刺激が呈示された位置を避けるかのように反応が生じた。このようにして,S+とS-の反応位置を質的データとして分析すると,反応位置の分化は,刺激性制御のオペラント成分ばかりでなく,生得的側面を強く持つレスポンデント成分といった二面的な分析の必要性を示唆している。本研究は,弁別訓練後の刺激般化テストにより,線分刺激の持つ複数の次元は刺激性制御の程度が異なり,角度次元の刺激性制御が,本数次元や長さ次元の刺激性制御に比べて強いことを示した。線分刺激が持つ次元は,これらの他に太さ,線分間間隔,明度,あるいは面積といった次元が存在する。今後,これらの次元についても,実験的分析を加えることにより線分刺激の複合的特性と強化の関係を明確にする必要がある。それと同時に高次の刺激性制御と考えられる選択的刺激性制御(例えば,Zentall,2012,Zentall & Riley,2000)や,複数ある刺激次元間の等価関係によって構成される概念学習(例えば,実森,2010)も,本研究と基本的に同一の実験パラダイムを適用することにより,明らかにすることができると考えられる。引用文献Bloomfield,T.M. (1967). A peak shift on a linetiltcontinuum. Journal of the ExperimentalAnalysis of Behavior,10,361-366.Gibson, B. M., Wasserman, E. A., Gosselin, F., &Schyns,P.G. (2005). Applying bubbles to localizefeatures that control pigeons’visual discriminationbehavior. Journal of Experimental Psychology: Animal Behavior Processes,31,376-382.Guttman, N., & Kalish, H. I. (1956). Discriminabilityandstimulus generalization. Journalof Experimental Psychology,51, 79-88.Hearst, E. (1968). Discrimination learning as thesummation ofexcitation and inhibition. Science,162,1303-1306.Hearst, E., & Jenkins, H. M. (1974). Sign-tracking:The stimulus-reinforcer relation and directedaction. Austin, TX :The Psychonomic Society.Honig, W. K., Boneau, C. A., Burstein, K. R., &Pennypacker, H. S. (1963). Positive and negativegeneralaization gradients obtained afterequivalent training conditions. Journal of Comparativeand Physiological Psychology,56,111-116.実森正子(2010).動物におけるカテゴリ研究―人工カテゴリの学習,プロトタイプ効果,カテゴリ事例の等価性について―認知科学,17, 36-53.Pokrzywinski, J. (1970). Presence-absence discriminationtraining on a line-length dimension.The Psychological Record,20,211-217.Sidman, M. (1994). Equivalence Relations andBehavior : A Research Story. Boston, MA :Authors Cooperative.渡辺茂(2010).鳥脳力―小さな頭に秘められた驚異の能力―化学同人Watanabe,S.,Sakamoto,J.,& Wakita,M. (1995).Pigeons’discrimination of paintings by Monet