ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

明星大学心理学年報2014,No.32,31―37資料幼少時に母との死別を経験した子どもの経過に関する研究近藤健太?竹内康二??本研究では,幼少期に母親と死別した成人男性,および子どもが幼少時に妻を亡くした父親を対象に面接を行い,この二つの事例に基づいて幼少期に母親と死別した子どもの養育に関する課題を検討することを目的とした。2歳8ヶ月で母親をなくした子どもの父親(53歳)と,5歳のときに母親と死別した経験のある男性(28歳)の二人に対し,面接者による一対一の半構造化面接を行った。面接の結果から,子どもの死別体験後の心的適応に影響する要因として,1死別直前の母親との別居期間の有無,2子どもが死別を経験した年齢,3残された親の再婚と新しい親への適応,4残された兄弟や新しい兄弟との適応が抽出された。キーワード:親との死別,幼児期,家庭環境死別に関する心理学的研究はFreud(1917/1970)が喪失対象との関係性などについて述べた悲嘆研究に始まる。その後Bowlby(1980/1981)は,喪失対象に向けられていた愛着を別の対象に結びなおすことが重要であり,喪失対象への愛着の継続は心的適応を阻害するものであると述べた。しかし山本(1997)は,死別後に喪失対象と物理的に切断されても心理的に結合することで喪失を補修し,死別を乗り越えることができると述べている。子どもにとって,保護者との死別体験はその後の発達に大きな影響を及ぼすといわれている。死別に伴う家族関係の変化や経済的理由などによる転校・転居などの二次的喪失を余儀なくされることがあり,そういった精神的負担や葛藤の解消のために通常子どもも死に対してもっと知りたいと思うことや,積極的に喪失対象の話をするなどの「大人と同じニーズ」を抱えるといわれている。しかし,そういったニーズを抱えつつも子どもの悲嘆反応は通常,大人とは異なるとされている(瀬藤・黒川・石井,2011)。そこで,子どもの主な悲観反応を「情緒・感情」「行動」「身体」の三つに分類し,Table 1に示した(瀬藤他, 2011)。瀬藤他(2011)によると,大人は,死別経験後数ヶ月は非常に強い悲嘆反応を示し,時間経過とともに徐々に落ち着いていく。それに対して子どもは,成長過程Table 1死別を経験した子どもの悲嘆反応情緒・感情レベルの反応悲しみ不安怒り落ち込み罪悪感後悔絶望感情の麻痺孤独無力感否認恐れ混乱現実感の無さ気分の変動不信など行動レベルの反応泣くぼんやりする集中力の低下学業不振落ち着きの無さ元気の無さ不機嫌さ引きこもりはしゃぐ神経過敏幼い子のような振る舞い習癖無口になる反抗大人のような振る舞い怖い夢をみる無くなった人の夢を見る大人にまとわりつくなど身体面の反応夜泣き不眠,睡眠障害食欲低下口渇頭痛や腹痛吐き気疲れやすさ胸の痛みアレルギー夜尿,排泄障害体のだるさなど(瀬藤・黒川・石井(2011)より一部変更して引用)?明星大学人文学研究科??明星大学人文学部