ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

明星大学心理学年報2014,No.32,39―46資料コミュニティの再建をめざした心理的支援田野畑村におけるチーム「バラ作戦」の経過報告被災地支援におけるアクション・リサーチのプログラム評価をめざして大橋智?田村友一??中村有???高下梓?黒岩誠????本報告では,3年目を迎えた岩手県下閉伊郡田野畑村における被災地支援活動について,戸別訪問(バラ作戦)・心理教育(講演会)・コミュニティ再建支援(食事会)で行った。戸別訪問では,全村を対象とした活動を行い,全村1300世帯にバラを手渡しした。講演会では,自殺予防を目的とし,リラクゼーションのワークなどを行った。食事会では,非日常世界を演出し,郷土料理などを振る舞った。各活動において回収された質問紙の結果からは,好意的な評価を得ているものの,世代間のニーズの差異など課題も明らかになった。キーワード:被災地支援,アクションリサーチ,プログラム評価,田野畑村問題岩手県下閉伊郡田野畑村における被災地支援活動は,2013年で3年目を迎えた。今年は村の要請もあり被災地域だけでなく,全村を対象とした活動を行うこととなった。これまで本活動に用いてきた象徴としての「バラ」に,被災を忘れていないというメッセージと,物理的にも社会的にも分断されつつある田野畑村を今一度繋ぎ直したいという願いを込めて,全村1300世帯にバラを手渡しすることを目的とした。過去2年間かかわりのある被災地域だけでなく,山間部などの可視的な被害のない地域(田村・高下・平田,2012)からも,比?的好意的に受け止められたと考えている。食事会などのイベントもこれまでと同様に開催し,離れて暮らすコミュニティの方々の接点として,また気軽に相談や雑談のできる場として提供された。その他,2年目からメンタルヘルスに関する講演や,村の対人援助職への具体的な支援など,心理専門職としての直接的,間接的な支援が展開できるようになってきており,少しずつではあるが,村民にその存在が認知されつつあることを実感できる3年目であった。一方で,これまでコミュニティの再建を目的にしてきた本活動のプログラムが,具体的にどのような効果?明星大学人文学部心理学科??明星大学総合健康センター???東邦大学医療センター大橋病院????明星大学総合健康センター?明星大学人文学部心理学科があり,より効果が期待できる対象がどのような属性を持つのかといったプログラム自体の評価は十分とは言えない。またプログラム自体の規模やコストの問題,臨床的意義の検討などの諸問題も先送りにされてきており,効率的に運営されてきたといえない部分も多い。そのため,特に2年目の活動はその目的や内容がややあいまいなまま実施されたと言わざるを得ず,1年目に比べ活動の意味づけが困難になってきている面も否定できなかった。今後の継続的な支援において,そのあり方を検討し,村のニーズに合った支援を,コミュニティの文化に浸透させていくための明確で効果的な支援プログラムの見直しが求められている。そこで本論では,過去2年間の支援経過を提示しつつ,2013年度の支援活動で得られたわずかな質問紙データをもとに,今年度の支援プログラムを報告し,来年度以降の活動プログラムにおける課題を明らかにすることを目的とする。田野畑村における被災・支援の経過田野畑村は岩手県沿岸北部に位置する,人口約4300人の村である。2011年3月11日に起こった東日本大震災において,24名の方が亡くなり,15名の方の行方が分かっていない。被災住宅数は281棟,被災世帯数は251世帯で,被災者数は734名に上る。他地域と同様に津波による被害が中心だが,リアス式海岸特有の地形による被害が顕著で,浜から谷に向かって波が押し寄せたため,浜からの距離ではなく,海抜によって同じ地域の隣接する家屋でも被害の状況が異なるとい