ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

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概要

明星大学 心理学年報 第32号

大橋・田村・中村・高下・黒岩:被災地支援におけるアクション・リサーチのプログラム評価をめざして41内を手渡し,直接声掛けをした。心理教育プログラム(講演会・相談員支援):講演会は村の保健センターを会場に行われた。講演の目的は,被災後3年目に起こりうる心身の状態や変化について知り,その対処を体験してもらうことだった。ストレスとストレス反応,ストレスマネジメントについての知識を共有した後,リラクセーション法などの実際的なワークも取り入れながら行われた。また,仮設住宅は2012年の訪村時点で,3か所残っており,そのうち2か所にボランティア相談員が常駐していたが,この相談員も被災者であり仮設住宅で生活をしているため,「今困っていること」について聴き,相談として受けることを基本方針とした。村の保健師に事前に聴取してもらった相談員の訴えに対応可能な心理士を選定し,臨床心理士2名,記録係として大学院生2名の基本構成で訪問した。心理職の専門家による知識の提供や共有,コミュニティの見立てやアドバイスなども提供された。コミュニティ再建プログラム(食事会):1年目から継続している食事会については,基本的な目的や構成は変えずに行った。主な目的は非日常体験の提供と,コミュニティ再会の場としての提供であり,カタルシスや癒しの効果を期待している。また子供たちには参加して楽しめることを中心に,運動等の発散的な遊びや,お絵かき等の表現型の遊び,もの作り等の作業系の遊びの3種を提供できる構成とした。また,今年からはイベント会場を仮設相談会場とし,相談受けることのできる心理士とボランティアの学生との区別がつくような工夫をし,イベント内での相談というより自由度の高い相談窓口を設定した。提供した内容は以下の通りである。飲食:郷土料理(はちはい汁,きみだんす),流しそうめん,ピザ,ペンネ,クレープ,タピオカ,田野畑牛乳,ソフトドリンク各種,アルコール飲料各種遊び:大道芸,クラフト飛行機,ハンモック,ブランコ,バスケットボール,リボンのバラ,うちわ作り,お絵かきコーナー,シャボン玉調理については基本的に村の栄養士と,「食改さん」と呼ばれる村の婦人会によるボランティアに担当してもらい,食改さんには食事を提供する側としてイベントに参加してもらった。調査方法戸別訪問プログラム(バラ作戦):戸別訪問の際に各戸にバラとイベントへの招待状とともに,事後回答を郵送する質問紙を配布し,郵送式調査を実施した。郵送式調査では,1年代,2性別,3自由記述欄を設け,回答を求めた。戸別訪問時に配布した質問紙の回答者は,26名であった。回収率は,2%(1300世帯換算)であった。心理教育プログラム(講演会):講演会会場において,質問紙と回答記入台を会場出入口に設置し,留置式調査を行った。留置式調査においては,1年齢,2居住地域,3参加の契機,4活動の満足度,5自由記述欄を設け,回答を求めた。講演会の参加者数は,32名であった。留置式調査の回収率は,56.25%(18名)であった。コミュニティ再建プログラム(食事会):イベント会場において,質問紙と回答記入台を会場出入口に設置し,留置式調査を行った。留置式調査においては,1年齢,2参加の契機,3活動の満足度,4自由記述欄を設け,回答を求めた。「食事会」の参加者数は,入退場者の人数から83名であった。アンケートの回収率は,32.53%(27名)であった。分析方法年齢や参加動機については,回答者が少なかったため,統計的な分析を用いずに定量的な分析から傾向を見出すにとどめた。自由記述の回答は計量テキスト分析(樋口,2004)を行い,分析にはKHCoder ver.2b30c(樋口, 2004)を用いた。分析の際の形態素解析にはMeCab(ver.996)(T.Kudo,K.Yamamoto,& Y.Matsumoto,2004)を用い,コーパス辞書はIPA辞書を用いた。結果と報告戸別訪問プログラム(バラ作戦)回収された質問紙から回答者年代は,多いほうから50歳代7名,60歳代が6名,70歳代3名,30歳代3名,80歳代2名,90歳代2名,20歳代1名,10歳代1名であった。また,性別は女性15名,男性10名であり,男性の回答者は2/3を占めた。性別差について,他の支援活動の参加者の性別比(講演会:男女比は1 :13,食事会:男女比は3 :14)に比べて男性の比率が高く,支援活動への潜在的な関心の高さがうかがえた。支援活動としての「バラ作戦」「食事会」に関する感想:「バラ作戦」や「食事会」など支援活動に対する肯定的な感想が,ほぼすべての年代から寄せられた(Table.3)。被災者だけでなく,一人暮らしや高齢者世代の方からは,「訪問」自体を肯定的に評価する声があった。一方で,バラ配布や食事会に関する不満や抵抗感を示す記述も寄せられた(Table.4)。