ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

大橋・田村・中村・高下・黒岩:被災地支援におけるアクション・リサーチのプログラム評価をめざして45Table. 6講演会の参加者の居住地域村中心部沿岸部その他田野畑西和野菅窪大芦和野猿山島越羅賀明戸机切牛田代岩泉町善代村20歳代0200000000001140歳代0000000000010050歳代1101101102000060歳代0220013202000070歳代00000000010000不明20100000101000計35311143151111年代Table. 7戸別訪問は支援を届かせるために有効に機能することが示された。回答者食事会の参加者年代と参加契機参加契機広報バラ配布知人保健センター20歳代2(7.7%) 1 0 1 030歳代1(3.8%) 1 1 1 040歳代3(11.5%) 0 2 0 150歳代3(11.5%) 2 2 1 160歳代12(46.2%) 3 9 1 270歳代5(19.2%) 1 4 1 0不明1(3.8%) 0 1 0 0計27 8 19 5 4活動の満足度:「食事会」における活動の満足度を複数選択で回答を求めた(Table. 8)。「食事」は,どの年齢層にも全般的に満足度が高かった。実際の食事の場面でも,地域の伝統食である「きみだんす」や「はちはい汁」が早い段階で完食となっていた。60歳以上の高齢者世代の参加者は,「知人との交流」や「スタッフとの交流」の満足度がやや高い傾向にあった。Table. 8年代食事工作知人と交流食事会の活動の満足度スタッフとの交流・相談その他(大道芸)20歳代2 0 0 0 130歳代1 1 0 0 040歳代2 0 0 3 150歳代3 0 2 1 060歳代11 2 4 10 070歳代4 0 4 4 0不明0 0 0 1 0計23 3 10 19 2報告のまとめ本報告において回収されたデータは,限定的なものにとどまっており,十分な信頼性・妥当性の下に述べることのできる範囲は限られている。郵送式調査の自由記述の内容分析からは,仮設住宅に避難している住民など被災者にとって,「バラ配布」などの支援活動は,肯定的に評価されており,また支援の継続を期待している。このことは,「来年も...」「忘れないで...」といった記述からも示唆される。また同時に,抱えている問題への対応に苦慮している姿もあり,慢性疾患や経済的な問題などを抱える被災者などが,問題を「抱え続ける」ことの苦しさを記述していることが特徴的であった。そして,高齢者世代にとっては,被災者と同様に,支援活動を肯定的に評価するとともに,直接的な関わりなどソーシャル・サポートを求めている姿が自由記述の中から見出された。このことは「バラ配布」による戸別訪問自体に勇気づけられていたり,「食事会」において「知人との関わり」に多くの参加者が満足している点からもうかがえる。近親者の死や自身が孤独であることが,被災者と同様の「喪失体験」として体験されていることをうかがわせる。一方で,働き盛りの子育て世代などでは,支援活動に対してやや侵襲的に感じていることがうかがえた。すでに社会的な関係にもとづく生活があり,移動手段を活用できる住民にとっては,新たな関係性が入り込む支援活動は,自分自身の持っている関係性を侵すような感覚を覚えるのかもしれない。一方で,「食事会」などの活動は,日常からの距離化を図る非日常の体験として評価されていた。このことは,最も生産性の高いライフステージにいる子育て世代の20~40代にとっては,目の前にある生活をどう生きるか,あるいは子ども世代をどう育てて