ブックタイトル明星大学 心理学年報 第32号

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明星大学 心理学年報 第32号

明星大学心理学年報2014,No.32,47―57講演録「東日本大震災被災支援と心理学-心のケアのこれから」第7回明星大学心理学会シンポジウム概要の報告福田憲明2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により引き起こされた大災害である東日本大震災の被災支援は,3年が経とうとしている現在も,医療・看護・保健・福祉をはじめ,様々な領域から行われています。心理学に対しても当初から「心のケア」に関連する支援が期待されてきました。震災への支援に関しては,1995年の阪神淡路大震災の経験がありましたので,そこで得た多くの知見を活かし,支援活動が展開されました。また,今回の支援活動の中では,災害の特性や地域の特性に適するように,新しい取り組みも試行されました。明星大学心理学研究室の教員も,様々な形で被災支援に取り組んできました。その活動の一環を,2012年度の第7回明星大学心理学会シンポジウムにて報告されました。以下にプログラムを示します。第7回明星大学心理学会シンポジウムプログラム「東日本大震災被災支援と心理学-心のケアのこれから」日時:2013年2月2日(土)15:30~16:30会場:明星大学日野キャンパス28号館113教室・114教室(ライブ中継)シンポジスト石井雄吉教授「被災地におけるアウトリーチ型心理支援の現状と課題」黒岩誠教授「田野畑村の『いま,ここで』」高塚雄介教授「災害対応におけるストレスケア~心のケアとは何をすることか~」司会福田憲明シンポジウムでは,宮城県で被災者支援活動に参加されている石井先生に,アウトリーチ型すなわち訪問スタイルの支援活動を報告いただきました。行政と公的機関と医療機関,福祉機関との協働による継続的な支援活動で,大きな成果をあげている活動です。次に学生ボランティアを組織して岩手県三陸北部の自治体と協力して活動している黒岩先生に支援活動の実際を報告いただきました。黒岩先生のゼミ所属の学生,院生卒業生を中心に,外部の臨床心理士の協力を得て繰り広げられた活動は,岩手県田野畑村での集中キャラバンの地域密着生活支援型の活動といえましょう。中でもバラの花を各宅に届けるという,“こころの支援”活動は大変興味深いものでした。まとめとして,被災支援を電話相談を通して行なってこられた高塚先生には,シンポジストの指定討論者として,この災害の特徴と現状の心の状態,そしてケアする側も含めた“こころのケア”についてお話しいただきました。本稿では,震災発生約2年が経過した時点での支援活動をテーマに開催されたこのシンポジウムの報告をもとに,各シンポジストの先生に新たに稿を起こしていただいたものを紹介いたします。シンポジウム開催時に,心のケアのこれからを考えてきましたが,それから1年が経過し,いまだ多くの方が不安の中に生活されています。復興が進み,震災前の生活に戻っているところもあれば,未だ戻る場を失い艱難の中にある方もまだまだ多い状況です。心のケアは,最後の一人のひとのこころが安らぐまで,いつまでも忘れないでいることが大切でしょう。あらためて,この稿をお読みいただき,私たちに課せられた使命について考える機会にしたいと考えています。