MESSAGE研究科⻑メッセージ
ごあいさつ
心理学研究科長福田 憲明
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明星大学大学院心理学研究科は、1974年に開設された人文学研究科心理学専攻の伝統を引き継ぎ、新たに独立した1研究科1専攻として2020年にスタートいたしました。本研究科心理学専攻は博士前期課程と博士後期課程を擁し、前期課程は一般心理学コースと臨床心理学コースに分かれています。
この2つのコースは、本研究科の伝統であり、また志向する心理学を表してます。一般心理学コースは、基礎的実験的心理学の流れを受け継いでいます。その源流には、S効果という知覚現象を発見した安倍三郎先生がおられます。臨床心理学コースは臨床心理学や心理臨床実践の流れを受け継いでいます。その源流には、我が国の臨床心理学の創始者の一人である戸川行男先生がおられます。
本研究科の特徴は、この二筋の流れ、基礎的実験的心理学と臨床心理学や心理臨床実践とが互いに尊重し合って、教育研究を発展させてきているということでしょう。
基礎的実験的心理学では、特筆すべきは実験装置の充実です。最新の脳機能の研究装置を配備し、また我が国では数少ないハトの動物実験研究施設を有しています。
臨床心理学や心理実践では、臨床心理士が誕生して間もなくの1990年には、市民の心理的問題に対応する心理相談室を開設し、地域の教育委員会と提携したスクールカウンセラーインターンを開始しています。その後2001年には臨床心理学コースが日本臨床心理士資格認定協会から臨床心理士養成第1種大学院の認定を受け、心理相談センターが開所し現在に至っています。この心理相談センターでの臨床実習をはじめ、本研究科の特色としては、臨床実習の重視があげられるでしょう。20数年にわたる臨床心理士養成に加え、公認心理師カリキュラムも整備し、更に実習科目を充実させています。
このような本研究科では、研究と実践とを結ぶことを大切にしています。心理臨床の実践を裏打ちする研究や基礎的研究に基づいた心理臨床の実践を目指し、博士前期課程では修士論文研究を課しています。臨床心理士の業務に調査研究が含まれているように、「科学者-実践家」である心理職の養成には研究も重要な要素だと考えています。
学習研究の環境に関しては、大学院生の国際学会等への参加の助成制度をはじめ、種々大学院での学習への支援や研究環境の整備充実にも努めています。
私たちを取り巻く社会はSociety5.0に向かっており、DXやメタバースなど高度情報化された複雑多様化した社会に変容してきているようです。気候変動等の地球環境に関する課題も大きく、政治経済状況も予測困難で不確実な時代です。このような中、私たち人間の在り方や人間関係の様相も変わってきているのでしょうか。心理学は、このような時代の要請にいかに応えることができるでしょうか。現実的な課題解決に向けて、人々の福祉の向上を志向して、高度な専門知識と技能を研究し、質の高い良い心理学の実践を提供することは一つの解となるでしょう。また、どのような時代であれ社会であれ、人間の認識と行動のメカニズムとプロセスは変わらないところもあるでしょう。環境に影響される私たちの課題の解決とともに、人間の根源にある基礎的部分を探求していく心理学も、現代においての深い人間理解には必要とされるのではないでしょうか。
明星大学心理学研究科で、これからの社会に貢献し、人間に関しての理解を深め、人々の幸福に寄与できる心理学の世界を、私たちと一緒に探求していきましょう。